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本に封印されていた大魔法使い様を助けたら、自分が何度も回帰している物語の世界の登場人物だと気付かされました(え、みんな知ってたの? 普通にホラーなんですけど)  作者: 朔島 涼
第一節 オープニング

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5/10

5.何でそんな大事な話早く教えてくれないんですか

「ふざけるなよ、お前!俺を誰だと思っている!そんなふざけた願い事三つで許されると思うな!」

突然ブチギレ始めた大魔法使い様。


「え?」

衝撃的な展開に私は目を丸くしている。なる早で解放しようと思っただけなのだが……お互いWin-Winではないのだろうか。


「絶対にお前が驚くような願い事を叶えてみせるからな!ケーキと紅茶は合わせて二つ目の願い事だ。三つ目はよく考えてから言え!次にしょうもない願い事言ったらぶっ飛ばすからな。」

「そんなー。」

え、何……何で怒られてるの私……。涙目でガックリと肩を落とす。


「せっかく俺が出してやったんだ。食うぞ!」

大魔法使い様は私の向かいの席に座ると、思いの外美しい所作でケーキを食べ始めた。私はまた目を丸くする。喋らなければ高位貴族と言われても信じられるレベルの綺麗さだ。


「ほら、お前も早く食え。残すんじゃない。」

うっかり大魔法使い様に見惚れていた私はハッとして、ケーキを食べはじめる。喋り始めたらやはり変な人だ。高位貴族とも見間違えるほどの綺麗な所作、美しい容姿、類稀なる魔法の技術、そしてこの口の悪さ。アンバランスにも程がある。どうやって育ったらこうなるのか。


「ちなみに大魔法使い様を本に閉じ込めたのは誰なんですか?」

先ほどの魔法を見ただけでもこの変な人は相当すごい魔法使いである事が分かる。そんな大魔法使い様を閉じ込める存在……。


「この世界を造ったもの、と名乗っていたな。」

大魔法使いは手を止めて斜め上を見上げながら答える。

「それって神様って事ですか?!」

私は驚いて思いの外大きな声が出た。


「さあ………名前など知らん。」

一瞬思い返してみてくれたようだが、分からなかったのだろう。しかし、『神様』は名前ではない。


「そいつは、俺が本に閉じ込められなければ物語が始まらないとか騒いでいたな。リディアが封印を解いて俺と出会うところから物語がスタートすると……。ソピアグノーシス学園で起こるイベントの内で三回、命に関わる大きな事件が起きるが、俺はそれを魔法で助けるお助けキャラというものらしい。三つのお願いを上手く使えた時だけリディアは生き残れると言っていたな………。おいお前、なぜ泣いている。そんなに感動する所があったか。」

私は泣いている。もちろん感動したのではない………絶望の涙だ。


「何でそんな大事な話早く教えてくれないんですか……。うう……詰んだ。私の人生……終わった。」

「お前が話も聞かず突っ走ってきたんだろうが。」

……おっしゃる通り。大魔法使い様の言う事が正しければ、私はやはりこの世界を舞台にした物語の登場人物らしい。そして大魔法使いの力を借りて生き残らなければならない大事件が学園生活の中で三つも起こる。もう二つ使っちゃったけど。二回も死ぬ計算ですよね……二回も自力で生き残る自信なんて全くないんですけど。この世界の元ネタも知らないし。


「あ、それから俺は大魔法使い様ではあるが大魔法使い様などと言う名前ではない。ルカスだ。」

「ルカス様……うぅ……どうぞよろしくお願いします……ぅ……。」

今そんな事はどうでもいい。しかしルカスが私の命綱を握っていると言うのであれば無下にもできない。


「やっと俺の偉大さが分かったか。じゃあ残りの一回は大切に使えよ。」

ええ、ええ、言われなくてもそうさせてもらいます。


私は泣きながら何度も頷く。既に味のしなくなったケーキたちであるが、残しでもしたらルカスの機嫌を損ねるかもしれない。私は泣きながら一生懸命に口に運ぶ。


「喉に詰まらせて死ぬなよ。お前が死んだらまた俺は本の中に戻されるんだ。」

そうでしょうとも……そしてまた時間が巻き戻って別のリディアが現れるのを待つんだわ。


「誠心誠意……頑張らせて……いただきます。うう………。」

「いや………残さず食えとは言ったが、そんなに泣くほどお腹いっぱいだったらもういい……。」

あの俺様系大魔法使い様のルカスが引くほど私は泣いていた。余談だが私は俺様系は苦手だ。ルカスは物凄く美しい顔ではあるが、絶対……絶対に死んでも推せない。


庭師が手塩をかけて手入れをした美しい庭の一画。泣きじゃくる私と正体不明の美しい男がケーキを食べているという何とも奇妙な絵面だが、心配して様子を見に来る使用人は一人もいない。うちの使用人たちがよほどの怠け者であるか、ルカスが私たち二人に認識阻害の魔法をかけているかのどちらかだろう。是非とも前者でない事を強く願う。


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