33.正真正銘クラスメイトだったはずだ
夜は炎魔法でバーベキューを堪能し、これまた炎魔法のキャンプファイヤーを囲んでオリエンテーションを楽しんだ。今は各部屋に分かれて寝る準備をしているところだ。
「どうしよう……。」
「どうしたの、リディア様?」
「何か普通に楽しくて……。」
「何それ、普通にいい事じゃない!」
くじ引きで一緒の部屋になったクラスメイトたち。いつものメンバー以外とこんなにもたくさん会話を交わしたのは初めてだ。
「リディア様って普段ルカス様たちと一緒にいて近寄り難かったけれど、話してみると本当面白いわね。」
「何だか、たまに雰囲気が違う時もあったのよね。」
「あー、学年が変わった頃はいろいろと不安定で……。」
「これからは、私たちとも遊んでね。」
「ええ、もちろん。」
私はこの世界に来て、初めての女友達ができた。入学当初の目標をここにきてようやく達成する事ができたのだ。1年半もかかるとは………まあ、実質6ヶ月だけど。
「そういえばリディア様って、よくルカス様と一緒にいるわよね。」
「ルカス様って怖そうだけど、大人な雰囲気が素敵よね。魔法の技術も素晴らしいし。」
「分かる! 同年代の男の子にはない色気があるのよ。」
「そ、そうかな?」
まあ、大人だし色気もあるのは認めよう。ただし、素敵かどうかは私には分からない。まあ、好みは人それぞれだ。
「私はやっぱりエリオット様!どこからどう見ても王子様って感じが素敵なのよ。」
「そうよね! 断トツでエリオット様が1番!」
私は首が取れそうなほど頷き、全力で同意する。
「あの美しい見た目で、満遍の笑みで微笑まれたらもう………ヤバい、最高すぎる。」
思い出しただけで鼻の奥が熱くなってきた。慌てて口元を押さえて俯く。
「リディア様はエリオット様派なのね。」
様子のおかしい私の話も、引く事なく微笑みながら聞いてくれる。女友達、最高かよ…………。前世を含めて、こんな風に推しの話をできる友達はいた事がなかったな、と違う意味でまた鼻の奥につんと痛みが走る。
「王子様といば、セオドア様! 中性的なお顔立ちに少年のような笑顔。私の庇護欲がくすぐられてしまいます!」
「セオに、庇護欲…………?」
私の頭の中はエリオットの笑顔を押しのけて、無数ハテナで埋め尽くされる。感傷的な気分も一気に吹っ飛んだ。さすがセオ。
「セオに庇護欲……。」
意味が分からなさすぎてもう一度呟いてしまった。
「わたくしのイチオシはレオ様。あの男らしい容姿に、意外と優しいところもギャップがあってキュンとしてしまいますわ。」
「うん、それはちょっと分かる気がする。」
レオは最初は……いや今も、顔は怖いと思っているが、意外と心は優しいのだ。
「ふふふ……林間合宿がこんなに楽しいとは思わなかったわ。」
「不穏な噂も流れていましたしね。」
「不穏な噂?」
私は耳には入ってきていなかったため、コテリと首を傾げる。
「昔、この林間合宿で生徒の殆どが魔物に食べられた事件は知っているかしら?」
「それは何となく……。」
二年になって早々、エリオットから聞いた話と同じだ。
「その時の生徒の亡霊がこの城に現れて、林間合宿に来た生徒を連れ去っていくっていう……。」
「そんな話が……。」
どこかで聞いたような話に、私は血の気が引くのを感じる。
「ふふっ、リディア様ったら。ただの噂よ。本当にある訳ないじゃない。」
「そんな真っ青な顔しなくても大丈夫よ。先生たちも一緒だもの。」
「そ、そうよね。」
しかし、先生がうじゃうじゃいるはずの学園の校舎内でラミアが這い回っていた実績がある。
「やだ、もうこんな時間だわ。そろそろ寝ましょうか。見回りの先生が来たら怒られるわ。」
「………そうね。」
多少の不安はありつつも、私はベットに潜り込む。
「電気消すわよー。」
パチン。ジジッ。
電気を消した瞬間に変な音がしたような気がしたが、暗くなった途端に物凄い眠気が襲ってきたため、私はそのまま意識を手放した。そして翌朝、目を覚ました私は信じられない光景を見にする事になる。
「誰も……………いない。」
五人で眠ったはずの部屋には、私しかいなかった。五台あったはずのベットも自分が寝ていた一台しかない。まるで最初から誰もいなかったかのように。
「嘘でしょ……………。」
部屋の中を見回ってみるが、他の誰かがいた形跡はない。そこで、私の超絶ポジティブ脳にある考えが浮かぶ。
「あ、もしかしてドッキリか。」
昨日あんな話をしてから寝たのも、私を驚かせるための布石だったのかもしれない。私が寝坊して、そのドッキリの餌食になっているのかもしれない。私は軽く身支度を整えて部屋の外に出る。しかし、そこにも誰もいなかった。部屋の外でドッキリ大成功のパネルを持って待っていると思ったのだが、そんな気配は微塵もない。
「いや、そんな訳ない。ただのドッキリならベッドまでは運び出さないわ。本当に最初から誰もいなかったのかしら…………。」
冷静になった私の身体から、さーっと血の気が引いていく。指の先が冷たくなっていく感覚に、無意識に両手を擦り合わせて始める。
「そう言えば昨日一緒にいた子たちの名前が分からないわ。もしかしてあの子たちも亡霊だったのかし……」
「そんな訳ないだろ。お前が名前を覚えてないだけで、正真正銘クラスメイトだったはずだ。」
誰もいないと思っていたにも関わらず、突然後ろから声をかけられた。
「うわあああああああああああーーーーー。」
私は驚き、絶叫しながら廊下の端まで全力で走り抜けた。ルカスの言った通り、私は自分の死よりも亡霊的なものの方が怖いらしい。
ピコン。
2nd ミッション スタート
攻略対象たちと共に異次元から脱出せよ




