23. そこの仲良し三人組
秋の月の最終二日間にわたる収穫祭が終了。二年までの出店に対する学年ごとの順位と、『収穫祭』の順位発表が行われた。
一年
一位:Eクラス(模擬店 クレープ)
二位:Aクラス(物販 石)
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「二位がAクラス……。」
「嘘だろ……あの意味の分からない石ころを並べた店が?」
私たちは営業中にその様子を見る事は出来なかったが、準備中の他の店は確認することが出来た。その中で一番『なんじゃ、こりゃ』と思ったのが1-A、石の物販だ。その辺に落ちていそうな綺麗目の石を並べただけ。なので値段も低く設定されていたのだが、「これ、誰が買うのかしら。」と通りすがりに顔が引き攣ったのを覚えている。
「なんか、店番している生徒目当てで買いに来る客が殺到したらしいよー。」
「確かに、あのエリオット様のお姿。お客さんが殺到するのも無頷けるわ。」
鑑定士姿のエリオットを思い出し、私は再び口元を押さえる。もちろん鼻血対策だ。
「ルカスもかなりの人気だったらしい。まあ見た目は悪くないからな。」
あの後、宣言通り私に鑑定士姿でクレープを買いに来たルカスを思い出す。
確かに見た目は悪くない。しかし性格に難あり!
「お前、全部口に出てるぞ。」
「はっ!」
こういう時、振り返ったら大抵ルカスが鬼のような形相でこちらを睨んでいるのだ。私は恐る恐る振り返る。
「え?」
しかし目に飛び込んできたのは、満足そうに微笑んでいるルカス。
「当たり前だ。俺は魔法だけじゃなく、見た目も良いんだ。」
「なるほど、性格はどうでも良いと………。」
あの時、何故あれほどまでに機嫌が悪かったのか分かった気がする。
「『見た目』というカテゴリーでも誰かに負けるのは癪だって事ね…………。」
半年ほど一緒にいるルカスだが、新たな一面を発見して混乱している。そんなに負けず嫌いだったけ………と思ったところで気が付く。ルカスが何かで負けたいる姿など見た事がなかった。そりゃそうだ。ルカスはこの国一番のチートな存在、大魔法使い様であった。
収穫祭を終えた学園は冬の月に入る。学年末テストを受けて聖夜祭を楽しんだ後、生徒たちは冬季休暇に入った。しかし聖夜祭でこれでもかと御馳走を食べ過ぎた私は、胃腸炎にかかり冬季休暇中ずっと寮のベッドで過ごす事になった。
「死んだ方がマシ……。」
「絶対にやめろ。食い過ぎで死ぬとかしょうもない死に方したらぶっ殺すからな。」
死んだら殺せないよ……と朦朧とする意識の中、私はぼんやりとそんな事を考えていた。
五日間の冬季休暇が明ける頃、私も見事胃腸炎からの復活を遂げた。数日は修了していなかった授業が行われ、その後テストが返却されて来年度のクラスが発表された。最終日に教室の掃除と整理整頓を行って、ソピアグノーシス学園の一年が修了する。明日からは春季休暇に入る。
「驚愕なんだけど……。もう一年が終わったなんて信じられない。」
「そうか? 俺はまあまあ濃い一年だったと思うけどな。」
レオが疲れたようにため息をつく。
「来年も三人一緒じゃん。よろしくねー。」
セオドアはいつものようにニヤニヤとしながらリディアに近づいて来た。彼は一年間ずっとこの調子だった。
「あ、ちょっと。そこの仲良し三人組。」
教室に残っていた先生がどこかの仲良し三人組に声をかけている。
………………。
おかしい。誰も返事をしない。まさかな……という気持ちでゆっくりと先生の方に視線を向けてみた。
「へ? ま、まさか仲良し三人組って……」
「あなたたち以外にいないでしょ。三人はEクラスから突然Aクラスに上がるから、春季休暇は毎日補習があるそうよ。コレ、時間割ね。」
先生は私たちに一枚ずつ時間割表を配る。
「は?」
「嘘でしょ………。」
「またまた、先生。冗談きついですよー。」
セオドアは先生の背中をバシバシとヘラヘラしながら叩く。
ピキッ。
「大真面、です。」
ズットーーーーン。
キレた先生が校庭に巨大な雷を落とした。誰も犠牲になっていないことを願う。
「そ、そんな怒るとこないのにー。」
「私たちだってせっかくの春休み、あなたたちに付き合わされるんだから、真面目に受けなさいね。」
先生は全く目が笑っていない笑顔で忠告して立ち去った。
「な、何で私たちが怒られたの? Eクラスの授業内容が酷すぎるってだけよね。」
「見ろ、この時間割!春休みいっぱい詰め込まれてるぞ!」
「わー、すごーい。(棒読み)」
私たちは心の汗を流しながら時間割を見つめる。
「Eクラス……」
「ふざけんじゃねえ……」
「本当にねー。」
仲良し三人組で渾身の川柳を合作し、我々は「また明日。」と放心状態のまま別れを告げた。
「あ、お前。家には帰れないんだろ。知ってる、知ってる。」
寮に帰ってくるなり、超絶ご機嫌な生徒スタイルのルカスと出くわした。
「え、これからどこか出かけるの?」
ルカスは今まさに玄関ホールから外に出ようとしていたのだ。
「そうだよ、これを逃したら次の冬季休暇まで自由がないからな。春季休暇と冬季休暇は俺は必要ないだろ。」
「あれ? でもこの前の冬季休暇はずっと寮に………」
「ずっとお前の看病してたんだろうが。従者スタイルで。」
「あ、そうでした……。でも、声が大きいよ、ルカス。誰かに聞かれたら……」
「認識阻害の魔法かけてるし大丈夫だろ。じゃあな。」
そんなしょうもない会話にすら認識阻害をかけるルカス。住む世界が違う。そしてルカスはご機嫌なまま、どこかに飛び立ってしまった。
「行っちゃったな。」
その後ろ姿を見送りながら、私は本日二個目の川柳を思いついた。
春休み 命の危機は ないようだ
そして彼の言葉からある事実が読み取れた。
「次の夏季休暇は危ないって事ね。」
しかしこの春季休暇は命の危機とは無縁の生活を送れるのだと、少しだけ肩の力を緩めたのだった。




