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24.勝手にバラすんじゃねえよ!

そして翌日から、私は毎日毎日知恵熱が出るほどの知識量を詰め込まれ、血を吐くような演習をさせられ、春季休暇という名の地獄の日々を過ごすこととなった。


バアーーーン。


私は両手を机に叩きつけて、勢いよく立ち上がる。

「何で二人はそんなに余裕なのよ!」

束の間の休憩時間、涼しい顔で隣に座っている二人を見て私は声を荒げる。

「え? だって実家では習ってたような内容だしな。」

「復習みたいなもんだよねー。」

「…………魔力量といい、何でセオとレオがEクラスに振り分けられたのか。本当に意味が分からないわ。」

衝撃の事実に私はへなへなと椅子に座り込み、机に突っ伏した。


「それは……。」

「僕もレオも名前、書き忘れたんだよねー。余裕すぎて油断しちゃった。」

テヘっと舌を出すセオドアと、「勝手にバラすんじゃねえよ!」と怒るレオ。

「………そう、なの。」

類は友を呼んだ。書き忘れた理由が違うだけで。しかし、そこが重要だ。


「EクラスからAクラスに上がるだなんて、二人も一緒だから安心してたのに………。本物の落ちこぼれは私だけ、というわけね………。」

「そんな事ねーよ。魔力量だけならこの中で一番じゃねーか?」

「レオ……。」

レオは意外と優しい。

「魔力量だけ、ねー。」


ピキッ。


ニヒヒッと笑うセオドアにブチギレて追いかけ回す。しかし、途中で先生が入って来て、二人まとめてめちゃくちゃ怒られた。タイミングわるっ。



「セオー。」

「へ?」

本日の全ての補習が終わったところで、教室の外からセオドアを呼ぶ声がした。

「兄上!」

セオドアは席を立ち、声の主のところに走り寄る。

「あ、兄上ぇーーー?」

私は目玉が飛び出るほど驚いている。


「セオはアーサー殿下の弟だ。知らなかったのか?」

「でも、セオドア・フレデリックって……。」

「フレデリックはミドルネームだよ、リディア嬢。」

気がつくとふわりと微笑むアーサーが目の前にいた。

「久しぶりだね、入学式以来かな。」

「お久しぶりです、アーサー殿下!」

「ふふっ、びっくりした? 」


「兄上。今日は何の用でこちらに?」

いつもニヤニヤへらへらしているセオドアが真面目に会話している。貴重すぎる光景だ。

「リディア嬢の事、ずっとセオに任せっきりで全然様子を観にこられなかったから、最後に挨拶だけでもって思って。このまま卒業してしまったら、リオンに怒られそうだからね。」

アーサーは眉を下げて笑う。


「私の事を、セオに任せる?」

「兄上からリディアの様子を定期的に報告するように言われてたんだよ。」

「お前への嫌がらせもセオがガードしていたな。」

「そ、そんな事が?!」

お兄様のあの一言で王太子と第なんちゃら王子セオドアまで動かす力があるなんて凄すぎる。


「さすがお兄様………。」

丸一年間会えていないお兄様を思い浮かべて、その麗しい姿にうっとりする。ちなみに私はこの国の王族が何人いるのかも、そのメンバー構成も全く分からない。さすがに国王陛下と王妃陛下、王太子殿下までは知っているが、他はちょっと思いつかない。だってこの十五年間、お兄様にしか興味がなかったのだから。


「どこでどうなったら『さすがお兄様』に辿り着くんだ。」

「僕か兄上に感謝するとこじゃん、普通? 本当、リディアは変わってるよねー。」

セオドアはいつものようにヘラヘラし始めた。

「あはははは、本当リディア嬢は私に興味がないよね。」

アーサーは目尻に涙を浮かべて笑っている。何がそんなに面白いのか分からない。私は最推しのお兄様を褒めただけだ。


「いつもセオから楽しいリディア嬢の情報をもらっていたんだ。これからも楽しみにしているよ。じゃあ、補習頑張ってね。」

アーサーはキラッキラの笑顔を振りまいていってしまった。

「結局何だったんだ?」

私は目が点になっている。

「兄上はリディアに陰ながら応援してるよ、って言いたかったんじゃないかなー。」

セオドアはアーサーの後ろ姿を嬉しそうに見送っている。実はこんなに近くにブラコン仲間がいた。


しかし、セオドアの言葉には少しだけ引っかかることがある。

「………さすがに陰すぎるんじゃないかしら?」

私はアーサーと会話をしたのはこれで三回目だ。一年間同じ学舎にいたにも関わらず、一回も交流することは無かった。

「アーサー殿下が表立ってお前を贔屓してみろ。死人が出るぞ。」

「確かに……それで入学当初は目立っちゃったんだった。」


「犠牲者はどちらか分かんないけどねー。」

セオドアがニヤニヤしながら私の髪の毛をくるくるといじり始める。絡まるからやめてほしい。マジで。

「確かにな。」

「私は人に手を挙げたりしないわ。」

私は心外だと、腕を組んで講義する。


「お前が何もしなくても、周りが勝手に動くんだよ。」

「ルカスとかルカスとかルカスとか、エリオットとか、まあー最終は兄上とか。とにかくやばい味方しかいないよねー、リディアの周り。」

レオもセオドアもそうは言うが、彼らが私のために動く姿は想像できない。私は腕を組んだまま、盛大に首を傾けたのだった。



ピコン。


次年度クラス分け:E→A

ゲーム難易度:イージー→ノーマル

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