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20. 1-Eの生徒たちを虐めてるって噂は本当?

私はそれから、野生のラプター(走竜)グリフィン(飛竜)への騎乗練習、湖での半日遠泳、迷いの森での一日サバイバルなどを行い、来年の運動会でうっかり死んでしまわないトレーニングを毎日のように繰り返した。もちろん魔法を使いながら。


「リディアは何かまた、変な事やってるんだってー?」

連日の過酷なトレーニングで体力を使い果たし、教室の机で突っ伏していた私に声をかけて来た人物。キャッキャッといつでも楽しそうな、この声の主はセオドアだ。


「お前も混ぜてもらえばどうだ? 来年のためになるぜ。」

ニヤリと笑い、後ろから話しかけて来たのはレオだ。学園での初めてのお友だちであるレオとセオドアは、ラミア(蛇女)の誘惑にかからず生き残る事ができた。ちなみに、お友だち候補だったあの女の子たちは、夏季休暇明けも学園内で見かける事はなかった。おそらくラミア(蛇女)の犠牲になったのだろう。Eクラス25人中、残っている生徒は13名となってしまった。



ちなみに生き残っている生徒たちには、魔物の存在は伏せられている。犠牲になった生徒たちは留学や病気、婚姻などのため退学したというような説明をされた。犠牲となった生徒の実家には流石に真相を伝えているらしいが、学園に対する抗議などは特になかったようだ。これもEクラスの生徒だったから………。Eクラスの生徒たちは学力が一定のレベル(小学一年生レベル)に達していない者の集まり。つまり、実家で最低限の教育を受けさせてもらえなかった、親に愛情を向けられていなかった者の集まりだとも言える。十五歳の学生ににあのレベルの授業から始めなければいけないほどに。要らない子どもは生贄クラスに……ゾッとする。


ヴェルディ伯爵家で愛情たっぷりに育てられた私はもちろんきちんとした教育を受けてきた。学力だって年齢相応の平均レベルだろう。じゃあ何故Eクラスに振り分けられたのかって? おそらくだが、クラス分けテストに名前を書くのを忘れたのだ。だって記名するように言われなかったから。前世からカウントしても初めて受けるテストに少し浮かれていたのかもしれない。記名欄があった事すらも覚えていない。Eクラスになって初めて受けた足し算のテスト、そこで「最初に名前を書きましょう。」と先生に言われて初めて、記名欄の存在を知ったのだ。



「レオがやるなら僕も一緒にやるよー。」

セオドアはニヤニヤしながらレオの肩に腕を回す。

「なっ、俺は別に…………。」

レオは心底嫌そうな顔でその腕を払い除けようとする。

「言い出しっぺはやらなくちゃねー。」

「そうね、Eクラスの底力見せてやりましょう!」

こうして来年の運動会に向けての地獄のトレーニングに、Eクラスの仲間が増えたのだった。



「で、何で俺が1-Eの生徒の面倒を見なきゃいけないんだ。」

空中に浮かびながら私たちを見下ろしているルカス。

「何かあった時に近くにいてもらった方が安心だもの。」

いつも以上にやる気のなさそうなルカスに、私は苦笑いで声をかける。


「Aクラスのルカスだー。」

セオドアがニヤニヤしながら寄ってきた。

「仲良いのか、お前たち。」

レオはルカスを見ながらセオドアとは反対側から近づく。


「仲良いよ。ね、ルカス。」

私もルカスを見上げてにこりと笑う。しかしルカスは不機嫌そうにピクリと眉を上げた。

「油売ってねーで早く一周してこい。俺は早く帰って休みたいんだ。」

そう言いながら、私たちの乗るラプター(走竜)の後ろで小さな爆発音を鳴らした。


キィィィィーーーー。


驚いたラプター(走竜)は一斉に全速力で駆け出す。

「ちょっ、ルカス!」

「しっかり捕まっておくんだな。のんびり移動してても練習にならないだろ。」

ルカスは一定の距離を保ってついて来てくれてはいるが、本当にただそれだけだ。


「うわああああ!」

「ぎゃーーーー!」

急に走り出したラプター(走竜)に振り落とされそうになっているレオとセオドアを助けるそぶりはない。私はすでにラプター(走竜)に何度か乗った事があるため、何とかしがみついてはいるが、二人は今日が初めてなのだ。


「危ないわ、ルカス。二人のラプター(走竜)だけでも止めて!」

「それじゃ意味ないだろ。それに二人はお前より腕力もあるはずだ。」

「そんな無茶な………。」

私は何とか自分が乗っているラプター(走竜)を制御し、前を走るレオとセオドアの姿を見つめる。流石に人のラプター(走竜)まで操る力は私にはない。


しばらくの間オロオロと二人の様子を伺っていたが、二人は見事に体勢を立て直してしっかりとラプター(走竜)の背中に掴まった。

「や、やばかった……。」

「……気を抜いたら一瞬で死んじゃうよー。」

やはり普通に危なかったようだ。急死に一生を得た二人は、翌日からは真面目にトレーニングに励むことになる。そして、廊下でルカスとすれ違う時は真っ青な顔をしていて少し可哀想だった。



そんな様子を見た他の生徒たちはあらぬ噂を立て始める。そしてついにその日はやってきた。

「ルカス、(きみ)が1-Eの生徒たちを虐めてるって噂は本当?」

声の主はエリオット・ダグラス。私の推しだ。

「はああああ?」

あらぬ疑いをかけられたルカスは思い切り顔を歪めてエリオットを睨みつけたのだった。

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