18.頭の中はずっと真っ白だわ
「ラミアさーん。何処ですかー?」
私は大声でラミアを呼びながら歩いている。
「………それで出てくるならもっと早く見つかってる。」
あれから連日ラミアを探し続けているが、ラミアの気配も攫われた生徒の姿も見つける事はできない。初日こそ恐る恐る足を踏み入れた水路であったが、もはや我が物顔で歩いている。入り組んだ構造になっているが、迷う事もない。私の特性上、一度通った道は二度と忘れないからだ。一度目にしたものは忘れない、前世から持っていた唯一の特技だ。
「出来るだけ早く行方不明の生徒たちも助けたかったんだけど……。」
学園は既に夏季休暇に入ってしまい、生徒たちは家に帰っているのか、行方不明になっているのかの判断もつかなくなってしまった。
「無理だろ。人間なんて丸呑みだから、衣服すら残らないはずだ。」
「嘘でしょ……。」
「そんな嘘ついてどうする。ちなみにラミアに殺されたリディアも片手の指では足りないな。」
ルカスは両手の指を折りながらリディアを見下ろす。
「………何で急に脅してくるのよ。」
リディアはジト目でルカスを睨め付ける。
「そろそろ、出てきそうなんだよ。」
「ラミアが? 何でルカスにそんな事……」
私は足を止めてルカスの方に向き直る。
「休暇に入って生徒たちの姿がなくなり1週間。そろそろお腹が減って新しい餌を探し始める頃だろ。」
「な、なるほど。」
「怖いのか?」
俯いた私の顔を覗き込み、ルカスは首を傾げる。
「死が怖いなんて感情、今の私にはないのよ。頭の中はずっと真っ白だわ。」
私は目を瞑って首を横に振る。
「ちなみにどうやってラミアを倒す予定なんだ? お前、まだ魔法を習ってもいないんだろ?」
ルカスは待っている。………私がお願いを口にするのを。
「そうね、私たち1-E……生贄クラスには魔法の授業はまだない。」
そう言いながら再び目を開けて顔を上げる。
「でも………。」
しかし、私の視線はルカスとは合わない。
「1-Eの生徒が魔法を使えない、とは限らないっ。」
私は素早く上げた手を振り下ろし、目線の先にいる魔物に魔法を打ち込んだ。
ギャアアアアーーーーー。
「マジか……。」
一瞬にして焼け落ちたため、悲鳴の正体は正確には分からないが多分、多分ラミアだったと思う。
「一番得意な炎系の魔法が効いてよかった。」
私はホッと胸を撫で下ろす。
「今のは何の魔法だ?」
「………さあ?」
炎とともに炭となって消える何かを視線で捉えたまま、私はコテリと首を倒す。
「さあって、どういう事だよ。」
「難しい事は私には分からないもの。ただ、頭にイメージした魔法が使える使えるってだけで。」
「イメージした通りに使えるのか?」
ルカスがこんなに質問を重ねるのは珍しい。炎が消えると同時にルカスへと目線を移す。
「そうね。失敗した事はほとんどないわ。ただ、イメージがはっきりしないものは使えないけど。だから分かりやすい炎魔法は使いやすいのよね。」
「信じられないな。俺ですら初歩の魔法から徐々にレベルを上げて練習したものだ。それを分類もレベルすらも適当であれほどの威力の魔法を発動できるなんて……。」
「ふふっ。私って天才なのかしら。」
「調子に乗るな。威力としてはまだまだ、だ。」
「はいはい。」
適当な返事をしながらも私はキョロキョロと辺りを見回す。
「何か探しているのか?」
「いや、突然ラミアが現れたからどこかに横穴があったりするのかな……と。」
「まだ攫われた生徒たちを諦めてないのか?」
「………最終確認だけでもさせて。」
ラミアが姿を現した辺りの壁を調べる。
「これね。」
やはり横穴があった。少し高い位置にあったため、視界の悪い暗がりでは見つける事が出来ていなかった。
「あそこまで投げれる?」
「お前をか? 冗談じゃない。飛ばすぞ。」
ルカスが私の背中に手を当てると、次の瞬間には私は横穴の中に移動していた。
「あっ、魔法使ったの? これってお願いに入る?」
「………入らない。お前は投げろって言ったからな。何でもいいから早く確認してこい。」
ルカスはしっしっと追い払う仕草をしている。本当に面倒くさいようだ。
「ひどい……。」
まあ結果として、その横穴の先には誰もいなかった。ルカスの予想通りである事が少し癪だったが、攫われた生徒の物だと思われる衣服の切れ端やペンなどが無数に転がっていて、やはりこれまで数多くの生徒が犠牲になった事が分かる。申し訳ないけれど、それを持ち帰る勇気はなかったため、私は手を合わせて元来た道を戻った。
特殊ミッション
ラミア討伐 クリア




