17. まるで今のお前のようにな
本題が大きく逸れてしまったが、今はラミアの居場所を探している。
「そう言えば、旧校舎時代の水路があるって校舎探検の授業で教えてもらったような………確かこっちに………。」
「…………Eクラスって何を学ぶところなんだよ。」
横を歩く私を半眼で見つめるルカス。
「…………私が一番聞きたいわ。」
私も全く同じ表情でルカスを見つめ返した。
他のクラスメイトは特に気にする様子もなく毎日普通に授業を受けているため、そんな疑問を持つ私がおかしいのかと思っていた。私とルカスの反応が正常なのだと思う。どう考えても十五歳の生徒に行う授業内容ではない。校舎探検の授業だけでなく、今のところ全て。
「でもそのおかげラミアの居場所を見つけられそうよ。」
私はそう言ってある扉の前で立ち止まる。
「ずいぶん古い扉だな。」
「ここは旧校舎時代そのままなんですって。この水路は湖と森の水源に続いているらしいわ。」
「湖からはセイレーン、森からはラミアが入って来れると……。」
ルカスは扉の前で腕を組み、大きく息を吐く。
「そのための水路って言いたいの?」
「そうでなければこんなもの残しておく必要性が感じられない。こんな物なくたって、普通に水道は使えるんだからな。」
「確かに……。」
私も同じく腕を組み、目の前の扉を見つめる。
「………俺はお前に謝らなければならない。先ほど俺はお前に間違ったことを教えた可能性がある。」
「何それ、どういう事? なんの話?」
「ここに来てから気がついた事だが、今までの幾度となく繰り返された回帰の中で、俺はEクラス出身の上級生に出会ったことがない。」
「え?」
「お前の考えた説。1-Eの生徒が全員、魔物に食べられている説は正しいのかもしれない。」
「そ、そんな訳………。」
ないとは言い切れない自分がいる。
「必要がないのに取り壊されず、残されたままの水路。1-Eだけにその入り口を教える授業。そして1-Eの生徒には魔法の授業を何も行わない先生。その全てが、1-Eの生徒たちが魔物の生贄であることを示している。」
「そんな…………先生たちも容認しているってこと?」
落ちこぼれクラスでも、『何と差別的なネーミングだ』と思ったが、生贄クラスなんて呼ばれようものなら、それはもう人権侵害も甚だしい。
「容認している可能性もゼロではないが……楽観視するのであれば、セイレーンもラミアも人を操る魔物だ。先生たちが操られている可能性もある。」
「そんなことある? 先生たちは優秀な魔法使いでしょ?」
「………生徒を殺せ。」
「え?」
ルカスの冷たい声で紡がれた声にゾクリと背中に冷たいものが走る。
「そんな洗脳であればおそらく先生たちも自分が操られていることに気がつき、防衛しようとするだろう。しかし与えられた指令が『水路を壊すな』『Eクラスを作れ』『1-Eに水路の存在を知らせろ』そんな意図も意味も分からないものであれば、操られていることも気がつかずに従ってしまう可能性が高い。この学園の慣習であると勘違いしてな。」
「そしてこの水路の扉を目にした生徒は知らぬ間に洗脳されてこの中に吸い込まれていくと……。」
私はごくりと唾を飲み込む。
「まるで今のお前のようにな。」
「なっ!」
「違うと言い切れるか?」
「それは…………分からない。」
私は素直な気持ちを口にする。何故ここが一番に思いついたのか、自分でもうまく説明ができない。既に洗脳されている可能性もあるという事か。
「やめておくか? 水路に入らなければラミアの犠牲になる可能性は低い。」
「その選択肢は私にはないわ。24時間ここで水路に入るクラスメイトを見張っているわけにはいかないでしょ。」
「俺はそんなことは言っていない。見捨てる選択もあるぞ、という事だ。」
「…………あるわけないでしょう。」
私はジト目でルカスを睨め付ける。
このままここでルカスと議論をしていても仕方がない。私は大きく深呼吸してから扉に一歩近づく。
「じゃあ、そろそろ行くわよ。」
私は水路の扉に手をかけ、ゆっくりと力を加える。その古い扉はギギギギギ……と大きな音を立てて開いた。
ピコン。
特殊ミッション スタート
水路の魔物を倒せ




