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第九話 303号室、猫屋敷でした

第九話 303号室、猫屋敷でした


「猫ぉぉぉぉぉ!!」


押し入れから、

次々と白猫が出てくる。


一匹。


二匹。


三匹。


まだ出る。


「な、なんでこんなに!?」


俺は完全に混乱していた。


ひまりは逆にテンション爆上がり。


「かわいいぃぃぃ!!」


「待て待て待て!」


もう床が猫まみれである。


しかも全員、

妙に人懐っこい。


にゃー。


にゃー。


結衣の周りに集まっていく。


「わっ……!」


結衣は戸惑いながらも、

そっと一匹を抱き上げた。


白くて小さい猫。


安心したみたいに、

結衣の腕の中で丸くなる。


「……ふふ」


結衣が笑った。


今までで一番自然な笑顔だった。


紗雪がそれを見て、

少しだけ目を細める。


「懐かれてる」


「動物好きなんですか?」


俺が聞くと、

結衣は小さく頷いた。


「昔……飼ってました」


でも。


その後、

少しだけ寂しそうに笑う。


たぶん、

色々あったんだろう。


その時。


ガチャ。


303号室の扉が開いた。


「うるせぇと思ったら……」


入ってきたのは榊だった。


ジャージ姿。


コンビニ袋持ってる。


そして。


部屋を見るなり固まった。


「……あ」


猫まみれ。


俺たちまみれ。


完全にカオス。


ひまりが指を差す。


「犯人!!」


「俺じゃねぇ!」


榊は即否定した。


「いや半分俺だけど!」


「半分認めた!?」


榊は頭をかきながらため息をつく。


「雨の日だけなんだよ」


「え?」


「この部屋、前住んでた頃から猫入り込むんだわ」


なんで?


「押し入れ裏、穴空いてんの」


「それ管理人案件じゃねぇか!!」


俺だった。


麗華が冷たい目で見る。


「修司、明日修理ね」


「俺ぇ!?」


ブラック現場始まった。


すると。


榊は結衣を見る。


「……新しい子」


「は、はい」


「悪いな。怖がらせた」


結衣は少し迷ってから、

小さく首を振った。


「……でも」


腕の中の猫を撫でる。


「ちょっとだけ、安心しました」


その言葉に、

榊は少し驚いた顔をした。


「……変わってんな」


「そうですか?」


「普通もっと嫌がる」


結衣は静かに303号室を見る。


ボロい畳。


古い壁。


猫だらけ。


でも。


「……ここ、あったかいです」


ぽつり。


その一言で、

部屋が少し静かになった。


紗雪がふっと笑う。


「……わかるかも」


ひまりもうんうん頷く。


麗華は呆れ顔。


でも、

どこか否定しない。


俺はその光景を見ていた。


春風マンション。


古くて。


ボロくて。


変な住人ばっかりで。


幽霊騒ぎまであって。


なのに。


なんでだろう。


少しだけ、

帰ってきたくなる空気がある。


その時だった。


ぐぅぅぅ……


静かな部屋に響く音。


全員が止まる。


結衣が固まる。


「あっ……」


まただった。


ひまり爆笑。


「お腹鳴りすぎ!!」


「うぅぅ……!」


結衣、顔真っ赤。


榊まで吹き出した。


「この子、毎回鳴ってんな」


「言わないでください……!」


その空気で、

みんな笑い始める。


深夜二時。


303号室。


猫まみれのボロ部屋で。


訳あり住人たちは、

なぜか笑っていた。


そして。


その時。


俺のスマホが鳴る。


知らない番号。


「……誰だ?」


出る。


『――春風マンション管理人さんですか?』


女性の声。


でも。


どこか焦っている。


『今すぐ、305号室を確認してください』


「……305?」


『お願いです』


そこで電話は切れた。


全員が顔を見合わせる。


ひまりが小声で言った。


「……305って」


麗華の表情が険しくなる。


紗雪は静かに目を伏せた。


そして。


結衣だけが知らない顔で聞く。


「……何かあるんですか?」


沈黙。


その後。


麗華が低い声で呟いた。


「……305、今、空室のはずよ」


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