第十話 305号室の秘密
第十話 305号室の秘密
「……305、今、空室のはずよ」
麗華の言葉で、
空気が一気に冷える。
深夜二時過ぎ。
猫まみれだった303号室が、
急に静かになった。
「え、じゃあ誰から電話……?」
ひまりの声が震える。
俺もスマホを見る。
非通知。
履歴なし。
普通に怖い。
「いたずらじゃないの?」
結衣が不安そうに言う。
すると。
紗雪が静かに首を横に振った。
「……305は、前から変」
「また!?」
このマンション怖い話多すぎるだろ。
榊が面倒そうにため息をつく。
「まだ続いてたのか」
「知ってるんですか?」
俺が聞くと、
榊は少し黙った。
それから。
「……305、昔女の人住んでたんだよ」
誰も喋らない。
榊は続ける。
「でも、急にいなくなった」
「いなくなった?」
「夜逃げって噂もあったし、自殺とか失踪とか色々」
ひまりが青ざめる。
「やめてよぉ……」
「ただの噂だ」
榊はそう言った。
でも。
言い切れない感じだった。
その時。
ピコン。
突然、
俺のスマホにメッセージ通知。
全員がびくっとする。
恐る恐る画面を見る。
そこには。
【305】
それだけ。
送信者不明。
「……は?」
背筋が凍る。
結衣が俺の腕を掴む。
「修司さん……」
怖い。
めちゃくちゃ怖い。
だが。
麗華が立ち上がった。
「行くわよ」
「えぇ!?」
「管理人なんでしょ」
またそれ。
「いやでも危なくない!?」
「全員で行けば平気よ」
平気かなぁ!?
でも結局。
俺たちは全員で、
305号室へ向かうことになった。
深夜の廊下。
古い蛍光灯がチカチカしている。
ギシ……
床が鳴るたび、
ひまりがビクビクしていた。
「無理ぃ……帰りたいぃ……」
「さっきまで猫で騒いでただろ」
「怖いのは別!」
すると。
結衣が小さく俺の服を掴む。
「……私も怖いです」
「ですよね」
「でも……一人よりマシです」
その言葉に、
少しだけ胸が温かくなる。
305号室の前へ着く。
静か。
古びたネームプレート。
何も書かれていない。
「……鍵、開いてる」
俺が気づく。
少しだけ扉が開いていた。
ひんやりした空気が流れてくる。
誰も動かない。
そして。
「……修司」
麗華が見る。
「はいはい俺ですよね」
もう諦めた。
俺はゆっくり、
305号室の扉を押した。
ギィ……
暗い。
カビ臭い。
長く人が住んでいない部屋。
なのに。
部屋の奥だけ、
明かりがついていた。
「……誰かいる?」
返事はない。
その時。
カタッ。
奥の部屋で音。
全員硬直。
「っ……!」
ひまりが俺の背中へ隠れる。
結衣も緊張している。
俺は覚悟を決め、
奥へ進んだ。
そして。
部屋の奥を見た瞬間、
全員が止まった。
そこには――
古いノートパソコンが一台。
そして画面には、
文字が表示されていた。
【春風マンションへようこそ】




