# 第四話 「閉ざされた201号室」
# 第四話 「閉ざされた201号室」
月夜荘に来て三日目。
修司はあることに気付いていた。
住人たちは互いを避けている。
ただ避けているだけではない。
まるで――
**話してはいけない何かがある。**
そんな空気だった。
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朝。
修司は中庭のベンチに座っていた。
そこへ美月が温かいコーヒーを持ってくる。
「はい」
「ありがとう」
修司は受け取る。
美月は少し笑った。
「修司さん、ずっと考え事してますね」
「まあな」
修司は月夜荘を見上げる。
「どうしても気になる」
「このアパート、変なんだよ」
美月は静かに頷いた。
「私もそう思います」
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その日の昼。
修司は一階に住む老人、
佐伯と話をすることにした。
玄関先を掃除していたからだ。
「こんにちは」
佐伯は顔を上げる。
「……誰だい?」
「修司です」
「少し聞きたいことがあって」
すると。
佐伯の顔色が変わった。
「五年前のことか」
修司は驚く。
「知ってるんですか?」
老人は黙る。
そして。
小さくため息をついた。
「やめておきなさい」
「え?」
「掘り返しても誰も幸せにならん」
そう言って部屋へ戻ろうとする。
修司は慌てて聞いた。
「何があったんです?」
老人は立ち止まる。
しばらく沈黙した後。
一言だけ残した。
「……あの夜からだ」
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夜。
修司は眠れなかった。
時計を見る。
午前零時。
月明かりが窓から差し込んでいる。
静かな夜。
その時だった。
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コツ……
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修司は目を開く。
「ん?」
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コツ……
コツ……
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足音。
廊下から聞こえる。
誰かが歩いている。
ゆっくり。
ゆっくり。
上の階を。
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修司は起き上がった。
「こんな時間に?」
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再び。
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コツ……
コツ……
コツ……
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確実に聞こえる。
二階だ。
そして。
音は――
**201号室の前で止まった。**
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修司は部屋を出る。
廊下は薄暗い。
誰もいない。
だが。
足音だけは聞こえた。
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コツ……
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修司は階段を上がる。
一段。
また一段。
心臓が早くなる。
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二階。
そこには。
誰もいない。
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「気のせいか……?」
そう思った瞬間。
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ギィ……
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201号室のドアが。
ほんの少しだけ開いた。
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修司の背筋が凍る。
「……」
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誰も住んでいないはず。
空き部屋のはず。
なのに。
確かに今。
内側から動いた。
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修司は恐る恐る近付く。
手を伸ばす。
ドアに触れようとした。
その時。
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「入っちゃダメ!!」
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後ろから声が飛んだ。
修司は飛び上がる。
振り向くと。
そこには美月がいた。
顔色が真っ青だった。
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「美月!?」
「ダメです!」
「絶対に開けちゃダメ!」
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彼女は震えていた。
今まで見たことがないほど。
怯えていた。
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修司は戸惑う。
「どうしたんだよ」
「この部屋に何がある?」
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美月は唇を噛む。
そして。
悲しそうな目で201号室を見る。
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「ここで……」
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声が震える。
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「五年前」
「一人の女の子が消えたんです」
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月夜荘の廊下に。
重たい沈黙が落ちた。
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修司は言葉を失う。
「消えた……?」
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美月は静かに頷く。
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「そしてその日から」
「月夜荘の時間は止まったんです」
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閉ざされた201号室。
消えた少女。
住人たちの沈黙。
そして。
今も聞こえる謎の足音――。
修司はまだ知らない。
その少女が、
美月と深く関係していることを。
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### 次回
# 第五話
## 「消えた少女の名前」
五年前の失踪事件。
修司は住人たちから少しずつ真実を聞き出していく。
だが全員の証言に共通する一つの名前。
**「陽菜」**
その名前を聞いた瞬間、
美月の表情が凍りつく――。




