# 第三部 第一話 ## いつもの朝が一番幸せ
# 第三部 第一話
## いつもの朝が一番幸せ
春風マンションに朝が来た。
窓から差し込む柔らかな光が廊下を照らし、どこか懐かしい木の匂いが漂っている。
一週間前。
この場所は未来の崩壊と戦っていた。
誰かが消えるかもしれない恐怖。
未来の火事。
帰る場所を失うかもしれない絶望。
それら全てを乗り越えて、ようやく迎えた平和な朝だった。
修司は管理人室の窓を開けた。
春の風が部屋へ流れ込む。
その風はどこか優しかった。
「終わったんだな……」
思わず呟く。
戦いの最中は考える余裕なんてなかった。
けれど今ならわかる。
自分はこの場所が好きなのだ。
騒がしくて。
問題ばかり起きて。
毎日何かしら事件が起きる。
それでも。
ここが帰る場所だった。
その時。
食堂の方から元気な声が響いた。
「ご飯できてるよー!」
三枝さんだ。
その声を聞いた瞬間。
修司は思わず笑ってしまう。
未来を救った英雄も。
春風マンションではただの管理人だった。
「はいはい、今行きます」
管理人室を出る。
廊下を歩く。
すると。
ドタドタドタッ!
ものすごい勢いで誰かが走ってきた。
「朝ごはんーーー!!」
ひまりだった。
寝癖全開。
靴下も左右で違う。
かなめが追いかけてくる。
「待ってください!」
「また寝坊したんですか!」
「それ絶対走る必要ないですよね!?」
ひまりは振り返りながら叫ぶ。
「だって今日ハンバーグ!」
「朝から!?」
「三枝さん神!」
修司は思わず吹き出した。
平和だった。
本当に。
どうしようもないくらい平和だった。
食堂へ入ると、結衣がテーブルを拭いていた。
朝日が横から差し込み、その横顔を優しく照らしている。
「おはようございます」
結衣が微笑む。
その笑顔を見た瞬間。
修司は少しだけ言葉に詰まった。
「……お、おう」
なぜだろう。
前より緊張する。
未来を救うより難しい気がする。
結衣も少し照れたように目を逸らした。
かなめがそれを見逃さない。
じーーーっ。
ひまりも。
じーーーっ。
修司が嫌な予感を覚えた時には遅かった。
「修司さん」
かなめが真顔で言う。
「なんだ」
「それ絶対付き合ってません?」
ブフォッ。
修司は飲んでいたお茶を吹きそうになった。
結衣は真っ赤になる。
「か、かなめちゃん!?」
「違うからな!」
「本当ですか?」
「本当だ!」
「怪しいです」
「怪しくない!」
食堂は爆笑に包まれた。
結衣は顔を真っ赤にしながら俯く。
そんな結衣を見て。
修司は少しだけ思う。
こんな時間が。
ずっと続けばいい。
未来なんて関係なく。
大事件なんて起きなくていい。
ただ。
この笑顔が続いてくれれば。
それだけで十分だった。
---




