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# 第二部 第十六話 存在しない702号室

# 第二部 第十六話 存在しない702号室


601号室。


深夜。


---


全員が鍵を見つめていた。


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【702号室】


---


確かに書いてある。


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だが。


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かなめが言う。


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「それ絶対おかしいです」


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「このマンション六階建てですよ」


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正論だった。


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春風マンション。


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一階から六階までしかない。


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七階なんて存在しない。


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ひまり。


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「ついに増築!?」


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怜司。


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「ないだろ」


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修司は鍵を見る。


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冷たい。


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妙に重い。


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その時。


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ルナが呟く。


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「知ってるよ」


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全員が見る。


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ルナの顔は真剣だった。


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「七階はある」


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静寂。


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「未来では見つかった」


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全員。


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「は?」


---


ルナは続ける。


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「でも」


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「条件がある」


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嫌な予感しかしない。


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かなめ。


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「聞きたくありません」


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ルナ。


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「深夜零時」


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「管理人と住人全員が揃うこと」


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「そして」


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小さく息を吐く。


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「全員が帰りたい場所を口にすること」


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静寂。


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ひまり。


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「なにそのイベント」


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だが。


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未来の蓮が残した鍵。


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試す価値はある。


---


そして。


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零時。


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春風マンション全員集合。


---


管理人室。


---


神崎。


加賀谷。


三枝さん。


結衣。


かなめ。


ひまり。


怜司。


るな。


ルナ。


蓮。


美咲。


---


みんな揃った。


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修司が鍵を持つ。


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「始めるぞ」


---


誰も反対しない。


---


その時。


---


神崎が笑う。


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「人生そんなもんだ」


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「やるしかない」


---


加賀谷。


---


「ほう」


---


「長生きはするもんだな」


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三枝さん。


---


「ご飯できてるよ」


---


「帰ったら食べなさいね」


---


みんな少し笑った。


---


そして。


---


順番に言う。


---


結衣。


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「私の帰りたい場所は」


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修司を見る。


---


「ここです」


---


修司少し赤くなる。


---


ひまり。


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「面白そうなことがある場所!」


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かなめ。


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「騒がしいけど安心できる場所です」


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怜司。


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「まあ何とかなるだろ」


---


「ここなら」


---


るな。


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「……怖いです」


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「でも帰りたいです」


---


ルナ。


---


「知ってるよ」


---


「ここがみんなの居場所だって」


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最後。


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修司。


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静かに言う。


---


「春風マンションだ」


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その瞬間。


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ガコン。


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全員。


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「!?」


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マンションが揺れた。


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そして。


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エレベーターのランプ。


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見たことのない数字。


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【7】


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静寂。


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かなめ。


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「それ絶対おかしいですぅぅぅ!!」


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ひまり絶叫。


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全員絶叫。


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だが。


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扉は開く。


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チーン。


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そこに現れたのは。


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七階へ続く通路。


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誰も見たことがない。


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誰も知らない。


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春風マンションの秘密。


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702号室。


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修司は鍵を握る。


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そして。


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扉を開けた。


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ギィ……


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中には。


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古い机。


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古い椅子。


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そして。


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一枚の写真。


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若い神崎。


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若い加賀谷。


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若い三枝さん。


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まだ完成前の春風マンション。


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そして中央に立つ。


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知らない男性。


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優しい笑顔。


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写真の裏には。


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一文だけ。


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【春風マンションを託します】


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【もし未来で迷ったなら】


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【人を信じてください】


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【答えはいつも仲間の中にあります】


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静寂。


---


その時。


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ルナが写真を見て震えた。


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「この人……」


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修司が聞く。


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「知ってるのか?」


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ルナは青ざめる。


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そして。


---


信じられない言葉を口にした。


---


「未来の火事の日」


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「最後に笑っていた人です」


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全員凍りつく。


---


写真の男性。


---


春風マンション創設者。


---


だが。


---


三十年前の写真に写るその人は。


---


十年後の火事の日にも。


---


全く同じ姿で現れていた。


---


歳を取っていなかった。


---


## 次回


### 第十七話


**「春風マンションを作った男」**


三十年前から変わらない男。


未来の火事。


702号室の秘密。


そして――


創設者が残した最後の手紙には、


春風マンションそのものの正体が記されていた。**「このマンションは、人の願いから生まれた」**。


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