# 第二部 第九話 未来で消えた男 「未来で消えた男です」
# 第二部 第九話 未来で消えた男
「未来で消えた男です」
ルナの言葉。
その場の空気が止まった。
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玄関前。
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相沢蓮は困った顔をする。
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「……えっと」
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当然である。
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初対面で失踪者扱いされた。
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ひまりが慌てる。
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「違うの!」
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「違わないけど違うの!」
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余計悪化した。
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蓮は苦笑する。
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「面白いマンションですね」
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春風マンション。
第一印象最悪である。
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数十分後。
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管理人室。
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蓮も交えて話していた。
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相沢蓮。
二十七歳。
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出版社勤務。
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だが。
会社が倒産。
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住む場所も失った。
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また春風マンション案件だった。
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神崎が小さく笑う。
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「相変わらずだな」
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人生に迷った人間ばかり集まる。
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それが春風マンションだった。
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だが。
ルナだけはずっと蓮を見ている。
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警戒していた。
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その夜。
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屋上。
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俺はルナを見つけた。
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一人だった。
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風が吹く。
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「気になるのか?」
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ルナは頷く。
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「うん」
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珍しく笑っていない。
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「蓮さんは悪い人じゃない」
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「でも」
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空を見る。
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「未来では一番謎の人だった」
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静かな声。
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「火事の後」
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「誰も見つけられなかった」
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「生きてるかもわからない」
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背筋が寒くなる。
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「でも写真にはいた」
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俺が言う。
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ルナは頷いた。
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「そう」
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「だから変なんだ」
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その時。
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屋上の扉が開く。
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ガチャ。
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現れたのは。
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蓮本人だった。
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「こんばんは」
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ルナが飛び上がる。
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完全に驚いていた。
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蓮は笑う。
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「話し声が聞こえたので」
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「邪魔でしたか?」
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「いや」
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俺は首を振る。
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蓮はフェンス越しに街を見る。
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夜景が広がる。
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そして。
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ぽつりと言った。
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「いい場所ですね」
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静かな声だった。
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「久しぶりです」
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「帰りたいと思った場所」
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その言葉に。
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俺は少し驚いた。
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結衣も。
怜司も。
かなめも。
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みんな最初に同じことを言った。
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帰りたい場所。
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春風マンションは。
そんな場所だった。
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だが。
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次の瞬間。
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蓮のスマホが鳴った。
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ピコン。
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画面を見る。
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その瞬間。
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蓮の顔色が変わった。
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初めてだった。
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笑顔が消えた。
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真っ青になる。
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「……そんな」
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ルナが気づく。
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「どうしたの?」
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蓮は答えない。
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震える手で画面を見つめる。
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そして。
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スマホを落とした。
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カラン。
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画面が見える。
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そこに表示されていたメッセージ。
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差出人不明。
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内容は一行。
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【見つけた】
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静寂。
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全員凍る。
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さらに。
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続けて通知。
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ピコン。
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【今度は逃がさない】
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ルナの顔色が変わる。
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「……嘘」
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蓮は震えていた。
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明らかに。
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知っている反応だった。
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俺が聞く。
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「誰だ?」
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蓮はゆっくり顔を上げた。
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そして。
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かすれた声で言った。
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「十年前に」
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「死んだはずの人です」
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全員。
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「は?」
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夜風が吹く。
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春風マンションの新たな謎。
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それは未来ではなく。
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十年前から始まっていた。
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## 次回
### 第十話
**「死んだはずの人からのメッセージ」**
蓮が隠していた過去。
十年前の事故。
そして――
未来の火事と、
その事故が繋がっていることが判明する。
さらに最後、
ルナのノートに新しい文字が浮かぶ。
**【第二の条件達成】**
**【次は結衣を守れ】**。




