# 第二部 第四話 もう一人のルナ
# 第二部 第四話 もう一人のルナ
夜十一時。
春風マンション管理人室。
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街灯の下。
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そこにいた。
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月野るな。
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……に見える少女。
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だが。
違う。
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笑顔が違った。
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るなが不安そうに笑うのに対して。
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その少女は。
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楽しそうだった。
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心の底から。
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面白いおもちゃを見つけた子供みたいに。
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「……来た」
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るなが震える。
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俺は外へ出た。
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かなめ。
結衣。
ひまり。
怜司。
全員ついてくる。
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完全に肝試し集団だった。
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少女は手を振った。
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「こんばんはー!」
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元気だった。
めちゃくちゃ元気だった。
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「管理人さん?」
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「……はい」
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「初めまして!」
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ニコニコ。
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「月野ルナです!」
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ひまり。
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「自己紹介した!」
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怖さ半減。
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だが。
るなの顔は青い。
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ルナはるなを見る。
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「久しぶりー」
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るな。
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「来ないで」
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ルナ。
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「えー」
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ショックを受けた顔。
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全然ショック受けてない。
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その時。
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かなめが聞く。
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「あなた何者なの?」
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ルナは首を傾げた。
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「私?」
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そして。
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笑う。
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「るなの失敗作」
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静寂。
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「え?」
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誰も意味がわからない。
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るなだけが目を閉じた。
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そして。
小さく言う。
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「違う」
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ルナを見る。
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「私が作ったんじゃない」
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ルナは笑う。
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「でも捨てたじゃん」
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空気が重くなる。
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意味はわからない。
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でも。
るなが傷ついているのだけはわかった。
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その時。
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タマが現れる。
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にゃあ。
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ルナの足元へ。
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スリスリ。
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全員。
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「え?」
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タマ。
基本人見知り。
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なのに。
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ルナは自然に抱き上げた。
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「久しぶりだね」
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タマ。
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ゴロゴロゴロ。
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完全になついている。
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かなめが青ざめる。
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「猫が懐いてる……」
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これは結構衝撃だった。
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その時。
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ルナが突然言った。
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「ねぇ管理人さん」
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「はい」
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「このマンション」
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「うん」
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「もうすぐ大変なことになるよ」
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全員固まる。
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ひまり。
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「また?」
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春風マンションだから。
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十分ありえる。
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だが。
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ルナは真顔だった。
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「新しい住人が来る」
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「それだけなら普通だろ」
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怜司が言う。
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ルナは首を振る。
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「違う」
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そして。
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小さく笑った。
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「その人」
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「未来を知ってるから」
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全員。
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「は?」
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未来?
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何言ってるんだ。
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しかし。
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ルナは続ける。
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「三日後」
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「午後四時」
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「赤いスーツケース」
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「泣いてる女の人」
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「その人を絶対追い返しちゃダメ」
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静寂。
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かなめ。
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「なんで?」
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ルナは少しだけ寂しそうに笑う。
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「追い返したら」
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風が吹く。
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街灯が揺れる。
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そして。
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ルナは言った。
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「春風マンションがなくなるから」
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全員。
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「…………」
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え?
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その瞬間。
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るなが叫んだ。
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「ルナ!!」
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ルナの体が。
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少しずつ透け始めていた。
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「時間切れだ」
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ルナは笑う。
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「またね」
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そして。
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最後に。
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管理人の俺だけを見て言った。
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「修司さん」
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「未来の部屋の最後のページ」
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「まだ読んでないでしょ?」
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背筋が凍る。
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読んでない。
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誰にも話してない。
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なぜ知っている?
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ルナはニヤッと笑った。
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「次はそこから始まるよ」
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そして。
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ふわり。
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夜風に溶けるように消えた。
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静寂。
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ひまりが一言。
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「……情報量多すぎる」
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全員同意だった。
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## 次回
### 第五話
**「未来から来た住人」**
三日後。
午後四時。
赤いスーツケース。
そして現れる謎の女性。
彼女が持っていたのは――
**未来の部屋で書かれたはずの手紙だった。**




