# 第五十話 最上階の空き部屋
# 第五十話 最上階の空き部屋
春風マンション存続決定。
そのニュースは、
予想以上に広がった。
支援金。
クラウドファンディング。
元住人たちからの応援。
気づけば。
目標だった一千万円は、
達成していた。
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「うおおおおお!!」
怜司が叫ぶ。
「達成したぁぁ!!」
ひまりが飛び跳ねる。
「春風マンション最強!!」
かなめも笑う。
結衣も泣きそうになっていた。
三枝さんは、
住人全員分のカレーを作っていた。
もはや祭りだった。
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そして。
一週間後。
大掃除の日。
「これ何?」
「知らん」
「じゃあ捨てるか」
「待て」
管理室から出てきた謎の箱。
三階から発掘された昭和の雑誌。
誰のかわからないギター。
誰も使ってない冷蔵庫。
カオスだった。
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その時。
黒崎が図面を持って現れる。
「修司さん」
「はい」
「一つ気になる場所があります」
真面目な顔。
嫌な予感。
黒崎は図面を広げた。
春風マンションの設計図。
そして。
最上階を指差す。
「この部屋です」
全員覗き込む。
そこには。
【601号室】
と書かれていた。
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「……え?」
俺は固まる。
「六階なんてあった?」
「ない」
加賀谷が即答。
「五階建てだ」
全員頷く。
そうだ。
春風マンションは五階建て。
六階なんて存在しない。
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黒崎は静かに言った。
「図面にはあります」
静寂。
かなめが震える。
「またホラーですか?」
ひまりが泣きそうになる。
「やめようよぉ!」
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だが。
黒崎は首を振った。
「違います」
「たぶん」
その"たぶん"が怖い。
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加賀谷が図面を見る。
そして。
顔色を変えた。
「……そうか」
「知ってるんですか?」
加賀谷は小さく頷く。
「昔あった」
全員。
「え?」
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「六階はあった」
「ただし」
「今は封鎖されてる」
空気が凍る。
また封鎖。
また秘密。
このマンション秘密多すぎる。
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加賀谷は続ける。
「正確には」
「屋根裏を改装した特別室だった」
「特別室?」
「神崎が作った部屋だ」
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神崎も驚いていた。
「まだ残っていたのか……」
つまり。
神崎ですら忘れていた。
四十年以上前の部屋。
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その時。
タマが現れる。
にゃあ。
そして。
スタスタ歩く。
階段を上る。
屋上への階段。
さらに奥。
誰も気づかなかった壁の前。
そこで止まった。
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「……ん?」
俺は近づく。
壁を見る。
古い壁紙。
だが。
よく見ると。
取っ手があった。
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かなめ。
「え?」
ひまり。
「え?」
結衣。
「え?」
俺。
「え?」
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壁じゃなかった。
扉だった。
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加賀谷がゆっくり近づく。
埃を払う。
現れたプレート。
そこには。
古びた文字。
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【601号室】
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静寂。
誰も喋らない。
風だけが吹く。
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その時。
カチリ。
勝手に鍵が外れた。
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「…………」
全員固まる。
ひまり。
「帰ろう」
正常な判断。
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だが。
ゆっくり。
扉が開いていく。
ギィ……
暗い部屋。
差し込む夕日。
そして。
部屋の中央に置かれていたものを見て。
加賀谷は息を呑んだ。
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「……嘘だろ」
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そこには。
大量のノートと。
写真と。
そして。
壁一面に貼られた――
**春風マンションの住人たち全員の記録。**
白石。
黒崎。
神崎。
三枝。
加賀谷。
そして。
最近の住人まで。
まるで。
誰かがずっと。
このマンションのみんなを見守り続けていたみたいに。
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## 次回
### 第五十一話
**「601号室の管理人」**
四十年間閉ざされていた部屋。
残された数百冊の日記。
そして――
最後のページに書かれていた名前は、
**「修司」だった。**




