# 第四十九話 白石が最後に残した手紙
# 第四十九話 白石が最後に残した手紙
春風マンション前。
誰も動かなかった。
神崎総一郎の手の中。
色褪せた一枚の手紙。
四十年前の紙。
震える指で、
神崎はゆっくり開く。
そこに書かれていた文字。
間違いない。
白石の字だった。
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【神崎さんへ】
【もしこれを読んでるなら】
【俺はたぶん、もういません】
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神崎の肩が震える。
静まり返る春風マンション。
テレビカメラも。
記者も。
誰も声を出さない。
神崎は続きを読む。
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【先に謝ります】
【心配かけてごめんなさい】
【でも神崎さんは悪くありません】
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神崎の目から涙が落ちた。
ぽたり。
手紙へ染みを作る。
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【ここに来た時】
【俺はもう終わってました】
【仕事もなくなった】
【家族もいない】
【生きてる意味もわからなかった】
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かなめが静かに涙を拭く。
結衣も俯いていた。
その言葉が。
痛いほどわかるから。
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【でも】
【春風マンションに来て】
【笑えました】
【ご飯を食べました】
【話を聞いてもらいました】
【生きててもいいと思えました】
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三枝さんが泣いている。
加賀谷も黙ったまま。
神崎は手紙を握りしめた。
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【だから】
【俺は後悔してません】
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神崎が顔を上げる。
信じられないという顔だった。
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【もし俺がいなくなっても】
【春風マンションは残してください】
【次の誰かのために】
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風が吹く。
朝日が差し込む。
白石の椅子。
屋上。
地下。
全部が繋がる。
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【俺は助かったから】
【今度は誰かを助けてください】
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神崎の涙が止まらない。
四十年間。
ずっと。
自分を責め続けてきた。
白石を救えなかったと。
だが。
白石は違った。
最後まで。
感謝していた。
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【神崎さん】
【ありがとうございました】
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最後の一文。
たったそれだけ。
だが。
神崎はその場に崩れ落ちた。
「……馬鹿野郎」
かすれた声。
「ありがとうなんて言うな」
涙が溢れる。
「もっと怒れ」
「もっと恨め」
「もっと……」
言葉が続かない。
四十年分の後悔が。
一気に溢れていた。
静かな朝だった。
その時。
タマが歩いてくる。
にゃあ。
神崎の前に座る。
そして。
何も言わず。
ただ隣にいた。
神崎は少し笑う。
涙を拭く。
そして。
ゆっくり立ち上がった。
全員を見る。
住人たちを見る。
春風マンションを見る。
ボロボロだった。
確かに古い。
危険な場所もある。
でも。
ここには人がいた。
生きようとしている人たちがいた。
神崎は深く息を吸う。
そして。
はっきり言った。
「取り壊しは中止だ」
全員。
「え?」
神崎は続ける。
「私も出資する」
沈黙。
数秒後。
ひまり。
「えええええええええ!!」
絶叫。
かなめも固まる。
怜司もフリーズ。
黒崎が笑った。
加賀谷は帽子を深く被る。
三枝さんは泣いている。
結衣は涙を流しながら笑った。
そして。
春風マンション再生計画は。
ここから本当に始まるのだった。
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# 次回
## 第五十話
**「春風マンション大改造計画!」**
目標金額達成!
住人総出の大掃除!
そして――
誰も知らなかった
「最上階の空き部屋」の扉が開く。




