# 第四十七話 テレビが来た日
# 第四十七話 テレビが来た日
「全国デビューしてるぅぅぅ!!」
ひまりの絶叫が、
春風マンション中に響いた。
一階へ駆け下りる。
玄関を開ける。
そして――
全員固まった。
「…………」
人。
人。
人。
マンション前に、
ものすごい数の人が集まっていた。
テレビカメラ。
記者。
スマホで撮影する人。
近所の野次馬。
カオスだった。
かなめが震える。
「な、なんで……」
怜司がスマホを見る。
配信視聴者数。
4万人。
「俺の人生終わった」
「始まったんだよ!」
ひまりがツッコむ。
その時。
一人の女性レポーターが近づいてきた。
マイクを持っている。
笑顔。
だが目が鋭い。
「こんにちは!」
全員後退。
「現在話題の春風マンションですよね!?」
話題になってた。
本当に。
レポーターは続ける。
「行方不明者の噂!」
「地下施設!」
「幽霊騒動!」
「存続危機!」
「本当ですか!?」
「どこで聞いたの!?」
情報漏れすぎだった。
かなめが青ざめる。
結衣も困っている。
黒崎は頭を抱えていた。
「最悪だ……」
検査員としてはそうだろう。
その時。
レポーターがマイクを向けた。
「管理人さん!」
「はい!?」
俺だった。
逃げられない。
「春風マンションは危険建築物なんですか!?」
空気が止まる。
みんなが俺を見る。
カメラも向く。
全国に流れるかもしれない。
俺は少し考えた。
そして。
正直に答えた。
「……危ないところはあります」
黒崎が少し驚く。
でも。
俺は続けた。
「ボロいです」
「水漏れします」
「変な住人もいます」
「誰が変だ!」
全員だった。
笑いが起きる。
だが。
俺は真面目に言った。
「それでも」
春風マンションを見る。
古い建物。
錆びた階段。
ボロい外壁。
でも。
確かに帰る場所だった。
「ここで助かった人がいます」
静かになる。
「俺もそうです」
結衣が目を見開く。
かなめも。
怜司も。
みんな黙っていた。
「だから」
「できるなら残したい」
風が吹く。
数秒沈黙。
そして。
どこかで拍手が起きた。
一人。
また一人。
気づけば、
集まった人たちが拍手していた。
ひまり。
かなめ。
結衣。
住人たち。
みんな笑っている。
その時だった。
黒塗りの高級車が、
ゆっくりマンション前へ止まった。
「……ん?」
空気が変わる。
ドアが開く。
スーツ姿の男たち。
そして。
最後に降りてきた人物を見て。
加賀谷が顔色を変えた。
「……お前か」
低い声。
その男は六十代くらい。
高級なスーツ。
鋭い目。
そして。
春風マンションを見上げて言った。
「まだ残っていたか」
静かな声。
だが。
敵意があった。
黒崎が小さく呟く。
「……来たか」
かなめが聞く。
「誰なんですか?」
誰も答えない。
代わりに。
加賀谷が苦々しく言った。
「春風マンションを建てた男だ」
全員。
「え?」
男はゆっくり笑った。
そして。
信じられないことを言った。
「このマンションは取り壊す」
拍手が止まった。
笑顔が消えた。
朝の空気が凍る。
春風マンション最大の敵が、
ついに姿を現した。
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## 次回
### 第四十八話
**「春風マンションを壊したい男」**
創設者の登場。
明かされる春風マンション誕生の秘密。
そして――
白石が最後まで守ろうとした
“本当の約束”とは。




