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# 第三十三話 地下に隠されたもの

# 第三十三話 地下に隠されたもの


「地下に、まだ隠してるもんあるだろ」


加賀谷の低い声。


405号室の空気が変わる。


三枝さんの顔色だけが、

明らかに違った。


「……三枝さん?」


俺が声をかける。


だが。


三枝さんは少し黙ったまま、

視線を逸らしていた。


ひまりが不安そうに聞く。


「な、なに隠してるの……?」


加賀谷は窓の外を見たまま言う。


「昔の資料だ」


「資料?」


「春風マンションが建った頃の」


その言葉に、

かなめが反応する。


「設計図とかですか?」


「……それもある」


加賀谷はゆっくり頷く。


「だが一番隠してるのは、

“住人記録”だ」


静かになる部屋。


結衣が小さく聞く。


「住人……記録?」


加賀谷は帽子を深く被り直した。


「ここは昔、

普通のマンションじゃなかった」


「え?」


俺たち全員が固まる。


加賀谷は低い声で続ける。


「行き場ない若い奴を、

安く住まわせるために作られた場所だ」


「家族と揉めた奴」


「仕事なくした奴」


「借金抱えた奴」


「……死にたがってた奴もいた」


空気が重くなる。


怜司が小さく息を呑む。


かなめも俯いた。


どこか、

他人事じゃない顔だった。


加賀谷は壁を撫でながら言う。


「ここで立ち直った奴もいる」


「消えた奴もいる」


その言葉に、

405号室が静まり返る。


そして。


加賀谷は、

俺を真っ直ぐ見た。


「地下には、

そいつらの記録が残ってる」


「……なんで隠す必要が?」


俺が聞く。


すると。


加賀谷は少しだけ苦い顔をした。


「検査が入れば、

昔の問題も掘り返される」


「問題?」


「このマンション、

一回閉鎖寸前までいったことある」


全員が息を呑む。


ひまりが震える声で聞いた。


「な、なんで……?」


加賀谷は少し黙る。


そして。


「昔、地下で事故があった」


空気が止まる。


地下。


また地下。


かなめなんて、

もう泣きそうだった。


「地下怖すぎません!?」


完全同意。


すると。


三枝さんが、

静かに口を開いた。


「……あの時ねぇ」


かすれた声だった。


「一人の住人さんが、

いなくなったの」


誰も動かない。


「ずっと見つからなくて……」


その瞬間。


俺の脳裏に浮かぶ。


305。


405。


消えた住人たち。


まるで、

このマンションはずっと――


“いなくなる人”を抱えてきたみたいだった。


その時。


カタッ。


405号室の机が揺れた。


全員びくっとする。


机の上。


カイトのPC。


消えたはずの画面が、

もう一度だけ点いた。


そして。


真っ黒な画面に、

白い文字が浮かぶ。


【地下へ行くな】


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