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タイトル未定2026/05/30 01:39

# 第二十九話 405号室の宅配地獄


「宅配でぇぇぇぇす!!」


405号室の外から、

元気すぎる声が響く。


空気が一瞬で変わった。


怜司の顔だけ、

みるみる青くなる。


「……やべ」


「どうした?」


俺が聞くと、

怜司は目を逸らした。


「……心当たりある」


嫌な予感しかしない。


ピンポーン!


再びインターホン。


しかも長い。


「いまぁぁすよねぇぇぇ!?」


圧が強い。


ひまりが小声で呟く。


「この人怖い……」


怜司は完全に現実逃避していた。


「居留守でいけるか……?」


「無理だろ」


すると。


ドンドンドン!!


ドアまで叩き始めた。


「佐藤怜司さぁぁぁん!!」


本名出た。


終わった。


かなめが引いてる。


「え、何頼んだんですか……?」


怜司は小さく答える。


「……配信用機材」


「買う金あるなら家賃払えぇ!!」


俺と麗華の声が被った。


怜司、真顔で土下座。


「すみませんでした」


最低だった。


すると。


外からまた声。


「開けないと会社に電話しますよぉぉ!?」


「ひっ」


怜司が震えた。


社会的死が近い。


結局。


俺がドアを開けることになった。


ギィ……


そこに立っていたのは。


金髪ポニーテールの女性。


二十代前半くらい。


制服姿。


でも。


目がギラギラしてる。


「やっと開けたぁ!!」


テンションが高い。


女性はズカズカ入ってくる。


そして。


怜司を見るなり叫んだ。


「逃げないでくださいよぉぉ!!」


「すみません!!」


怜司、

秒速土下座。


かなめ、

完全に引いてる。


女性は段ボールを置きながら、

怒涛の勢いで喋る。


「代引き無視三回!」


「電話無視!」


「メール既読スルー!」


「こっちは困るんですよぉ!?」


「本当にすみません……」


ひまりが小声で聞く。


「誰?」


「宅配のお姉さん……?」


すると。


女性は振り返り、

ニコッと笑った。


「違います!」


笑顔が怖い。


「動画機材専門店、“デジガジェ・ナカムラ”です!」


会社の人だった。


「取り立てに来ました♡」


♡つけるな。


怖い。


その時。


女性はふと周囲を見る。


春風マンション住人勢。


猫。


プリン。


カオス空間。


「……何ここ」


正常な反応だった。


俺は咳払いする。


「えっと、春風マンションです」


「見ればわかります」


正論。


すると。


女性は怜司を指差した。


「この人、ローン審査ギリギリで高級機材買ったんですよ!?」


「やめてぇ!!」


社会的公開処刑。


かなめが怜司を見る目が冷たい。


「クズ……」


「否定できねぇ……」


すると。


女性はため息をついた。


「まぁでも」


ぽつり。


「ちゃんと生きてたならよかったです」


空気が少し変わる。


怜司が顔を上げる。


女性は目を逸らした。


「急に連絡全部消えるから……ちょっと心配したんです」


その言葉は、

少しだけ本音っぽかった。


すると。


ひまりがニヤニヤし始める。


「……あれ?」


「ん?」


「この二人、なんか怪しくない?」


「は?」


女性の顔が赤くなる。


怜司も固まった。


「ち、違いますから!?」


「ほんとぉ?」


春風マンション住人、

すぐ恋愛疑う。


その時。


ぐぅぅぅ……


静かな405号室に、

また腹の音。


全員止まる。


今度は――


宅配女性だった。


「…………」


沈黙。


そして。


ひまり、

大爆笑。


「また増えたぁぁぁ!!」


女性は顔真っ赤。


「わ、悪いですか!? 朝から配達で何も食べてないんですよ!!」


すると。


三枝さんが、

自然な動作でおにぎりを差し出した。


「はい」


「えっ」


「春風マンションは空腹禁止よぉ」


ついに外部にも適用された。


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