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# 第二十八話 送信された「助けて

# 第二十八話 送信された「助けて」


『……ありがと』


405号室に響いた、

小さな男の声。


優しい。


少しだけ安心したみたいな声だった。


そして。


その瞬間。


PC画面がふっと消える。


部屋が静かになった。


「…………」


誰も喋れない。


ひまりなんて、

完全に涙目だった。


「な、泣くやつじゃんこんなの……」


かなめも目を伏せている。


結衣は静かに微笑んでいた。


怜司だけが、

床に座ったまま動かなかった。


俺はそっと声をかける。


「……大丈夫か?」


怜司は少し黙る。


それから。


「……あいつさ」


かすれた声。


「最後まで、

誰にも迷惑かけたくなかったんだな」


静かな405号室。


怜司は笑った。


でも。


かなり無理した笑いだった。


「馬鹿だよなぁ……」


その時。


にゃー。


タマが、

いつの間にか405号室へ入ってきていた。


そして。


怜司の膝へ飛び乗る。


「……お前」


怜司が小さく笑う。


猫は何も言わない。


ただ、

そこにいた。


それだけだった。


でも。


それが少しだけ、

救いみたいだった。


その時。


かなめが部屋の隅を見て、

小さく首を傾げる。


「……あれ?」


全員がそちらを見る。


机の横。


小さなメモ帳が落ちていた。


怜司が拾う。


ページを開く。


そこには、

カイトの字でこう書かれていた。


【春風マンションの好きなところ】


そして。


箇条書きで、

色々書かれていた。


【管理人さんがちゃんと挨拶してくれる】


【三枝さんの味噌汁】


【紗雪さん静かなのに優しい】


【ひまりさんうるさいけど面白い】


「うるさいは余計!」


ひまりが涙目で抗議する。


でも笑っていた。


ページをめくる。


【麗華さん怖いけど面倒見いい】


麗華、

少しだけ目を逸らす。


さらに。


【夜中に帰っても、

“おかえり”って言ってくれる場所】


その文字で、

部屋が静かになった。


怜司は、

そのページを見たまま呟く。


「……あいつ」


「春風マンション、好きだったんだな」


俺は窓の外を見る。


朝日が少し差し込んでいた。


古いマンション。


ボロい廊下。


変な住人たち。


でも。


ここにはちゃんと、

誰かを救った時間があった。


その時。


グゥゥゥ……


また響く腹の音。


全員停止。


怜司だった。


「…………」


ひまり、

爆笑。


「お前もかよ!!」


「昨日から何も食ってねぇ……」


「終わってる!!」


すると。


三枝さんが、

またおにぎりを差し出した。


「はい」


「……マジで神」


怜司が受け取る。


その光景を見て、

かなめが吹き出した。


結衣も笑う。


麗華まで少し笑っていた。


405号室。


さっきまで重かった空気が、

少しずつ温かくなっていく。


そして。


俺は思った。


春風マンションは、

誰かの傷を消せる場所じゃない。


でも。


一人で抱え込まなくていい場所には、

なれるのかもしれない。


その時だった。


ピンポーン。


突然。


405号室のインターホンが鳴る。


全員止まる。


「……誰」


俺が呟く。


すると。


ドアの向こうから、

元気すぎる女の声が響いた。


「宅配でぇぇぇぇす!!」


その瞬間。


怜司の顔が、

一気に青ざめた。


「……やべ」


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