# 第十九話 305号室の天井裏
# 第十九話 305号室の天井裏
【天井裏】
鍵のプレート裏に浮かんだ文字。
全員が凍りついた。
「……は?」
俺が間抜けな声を出す。
ひまりはもう半泣き。
「まだ続くのぉ!?」
「むしろ今始まった感ある」
榊が真顔で言った。
やめろ。
怖さを強化するな。
結衣は、
305の鍵をじっと見ていた。
「……“見つけて”って」
「これのことなんですかね」
静かな声だった。
紗雪がソファへ座りながら、
眠そうに目を閉じる。
「……天井裏、入れる場所あった気がする」
「気がするで言うなよ」
麗華がため息をつく。
「でも、305を調べるしかないわね」
その瞬間。
ぐぅぅぅ……
また響く腹の音。
全員停止。
結衣、顔真っ赤。
「あっ……!」
ひまり爆笑。
「このタイミングで鳴る!?」
「うぅぅぅ……!」
怖い空気が一瞬で壊れた。
俺も吹き出しそうになる。
すると。
紗雪が冷蔵庫を開けた。
「……プリン残ってる」
「食うの!?」
「怖い時は甘いもの」
妙に説得力あった。
数分後。
なぜか全員でプリンを食べていた。
深夜三時半。
管理人室。
訳あり住人たちが、
無言でプリンを食ってる光景。
カオスである。
でも。
そのおかげで、
少しだけ落ち着いた。
麗華がスプーンを置く。
「……行くなら今のうちね」
「マジで行くの?」
「朝になると人来るでしょ」
確かに。
このマンション、
昼になると普通に生活始まる。
今しかない。
結局。
俺たちは再び305号室へ向かった。
古い廊下。
静かな雨音。
305の扉を開ける。
ギィ……
相変わらず、
空気が冷たい。
だが。
さっきより、
どこか“待ってる”感じがした。
「……天井裏ってどこから入るんだ?」
俺が部屋を見回す。
その時。
すずが天井を指差した。
「……あれ」
古い押し入れの上。
小さな木製の点検口。
半分だけ開いていた。
「最初から開いてたっけ」
榊が眉をひそめる。
誰も答えられない。
ひまりが俺の背中を押す。
「管理人〜」
「便利屋扱いするな!」
でも。
結局、
脚立を持ってきて、
俺が上ることになった。
ギシ……
古い脚立が怖い。
点検口へ手を伸ばす。
冷たい。
そして。
ゆっくり開けた。
ギィ……
真っ暗。
懐中電灯で照らす。
古い木材。
埃。
細い通路。
その奥に――
何か置いてある。
「……箱?」
俺は慎重に手を伸ばす。
小さな木箱だった。
古い。
鍵付き。
でも。
鍵穴にぴったり合いそうだった。
305の鍵。
「……これか」
俺は、
震える手で鍵を差し込む。
カチッ。
静かな音。
箱が開いた。
中には。
大量の手紙が入っていた。
そして一番上。
古い封筒。
そこには、
綺麗な文字でこう書かれていた。
【春風マンションのみんなへ】




