# 第十八話 雨の窓の向こう
# 第十八話 雨の窓の向こう
コンコン。
雨に濡れた窓が、
もう一度静かに叩かれる。
全員が固まった。
深夜三時過ぎ。
管理人室。
誰も喋れない。
窓の向こうには、
女が立っていた。
長い黒髪。
白い服。
びしょ濡れ。
街灯に照らされた顔は、
どこか青白い。
「…………」
ひまり、完全停止。
麗華でさえ息を呑んでいる。
結衣は、
俺の袖をぎゅっと掴んでいた。
そして。
紗雪が小さく呟く。
「……宮坂さん?」
その瞬間。
女がゆっくり顔を上げた。
微笑んでいる。
でも。
どこか寂しそうな笑顔。
「っ……」
俺の喉が鳴る。
怖い。
なのに。
目を逸らせない。
すると。
コンコン。
また窓を叩く。
今度は少し強く。
「む、無理ぃ……!」
ひまりが半泣き。
榊も真顔になっていた。
「……おい修司」
「はい」
「絶対開けるなよ」
「開けねぇよ!?」
普通に怖い。
だが。
結衣が窓の向こうを見ながら、
小さく言った。
「……でも」
「泣いてるみたいです」
その言葉で、
空気が止まる。
俺はもう一度、
窓の女を見る。
確かに。
笑ってるのに、
どこか苦しそうだった。
その時。
女がゆっくり手を上げる。
白い指。
そして。
窓ガラスに、
文字を書き始めた。
キュ……
濡れた指で、
曇った窓へ。
【み】
【つ】
【け】
【て】
「……見つけて?」
俺が呟く。
次の瞬間。
ブツッ。
管理人室の電気が消えた。
「きゃぁっ!?」
結衣が悲鳴を上げる。
真っ暗。
雨音だけ。
そして。
カタン。
管理人室の奥から音。
「っ!?」
誰かいる。
暗闇の中。
カタン。
また音。
冷蔵庫の方。
俺は震える手で、
スマホのライトをつけた。
白い光が、
ゆっくり部屋を照らす。
机。
ソファ。
冷蔵庫。
そして――
床に、
古い鍵が落ちていた。
「……鍵?」
結衣が小さく呟く。
鍵には、
小さなプレートが付いていた。
そこには。
【305】
と刻まれている。
全員が黙る。
その時。
パッ。
電気が戻った。
俺たちは一斉に窓を見る。
だが。
もうそこに、
女の姿はなかった。
雨だけが静かに降っている。
ひまりが震える声で言った。
「……今の、絶対いたよね?」
誰も否定できない。
すると。
紗雪が、
床の鍵を見つめながら呟く。
「……305の鍵、前から失くなってた」
「え?」
「管理人用のスペアキー」
空気が変わる。
麗華が低い声で言う。
「つまり」
「誰かが返したってこと?」
静まり返る管理人室。
その時。
カチッ。
突然、
305の鍵がひとりでに回った。
誰も触ってないのに。
そして。
鍵のプレート裏に、
小さな文字が浮かび上がる。
【天井裏】




