↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Boundary  作者: 楓シロ
98/140

第98話 残された灯り

 一歩足を踏み入れたビルの中は、異様だった。


 戦争で大破したはずの、ガランとした広いフロア。

 誰もいない。


 それなのに、コアの莫大な電磁エネルギーを強制供給された古い配線がパチパチと火花を散らし、煤けた照明を煌々と輝かせている。


 頭上のライトが、彼らの一歩後ろを追うように順々に灯っていく。


 前へ進んでいるはずなのに、景色だけがほんの一瞬、取り残される。


 時間そのものが、こちらに追いつこうとしているような変な感覚だった。


「電源が、どこかから供給されています」

 師乃がモニターを操作する。

「旧AIコアのエネルギー反応と一致しています」


「コアが建物を動かしてるのか」

 蓮が顔をしかめた。


 師乃の視線が、崩れた天井をゆっくりとなぞる。


「今まで回収したコアとは構造が違います」

 師乃がモニターへ視線を落としたまま言う。

「出力効率が異常に高い……他のサテライトより、何か条件が違う可能性があります」


「そんな差があるのか?」

 蓮が周囲を見回した。


「ここ、昔は大阪府庁だったホー」

 アウルが呟く。


 ソラが目を丸くする。

「え、ここって行政施設だったんですか?」


「百年前はな」

 九条が崩れた吹き抜けを見上げた。


 師乃が静かに続ける。


「マザーが都市機能のすべてを管理していたなら、府庁のような中枢施設には、より大きな役割を持たせていた可能性はあります」


 誰もすぐには言葉を返さなかった。


 この場所は何か違う。


 崩れた庁舎の奥で、壁面のデジタル時計が一秒進んでは、また同じ時刻へ戻っている。


まるで百年前の時間だけが、まだこの場所に引っかかっているみたいだった。


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。