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Boundary  作者: 楓シロ
62/80

第62話 それが仕事なので

 御影がベッドに寝かされていた。

その右腕はなかった。


 医療班の中条さくらが黙々と処置をしていた。

白い包帯が赤く滲み、床には切り裂かれた服が無造作に置かれていた。


「御影さん」


 ソラが隣に腰を下ろす。

 御影が視線だけを向けた。


「情報は届いたか」

「届きました。でもコアが…間に合わなくて」

「全部奪われたのか?」

「いえ、奪われたのは、最初に僕が持っていたコアだけです」

「ん?敵はそれしか持っていかなかったのか?」

「はい」


考え込む御影。


「狙いは最初からあのコアだったのかもな」

「えっ…」


「御影さん、今は休んでくださいよ」

処置していたさくらが、小さく息を吐いた。

「諜報の人はみんなそうなんです。」

包帯を巻く手を止めないまま、淡々と言う。

「骨が折れても大怪我しても、顔色ひとつ変えないんですよ。」


「…さくら」

さくらが少しだけ眉を寄せた。

「痛くないわけないのに」


御影はしばらく黙っていたが

やがて静かに口を開いた。


「表情に出さないのも諜報の仕事だ」

 ソラはその横顔を見つめた。

 御影は何も言わなかった。


 

 

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