第61話 守られなかった約束
作戦フロアへと戻ってきた第一部隊の面々。
広々とした部屋には、誰一人として声を出す者はなく、ただ重苦しい沈黙だけが支配していた。
蓮はソファに深く座り込んだまま、拳を握りしめて床を睨みつけている。
紫苑は壁際に立ち、己の動かなかった両手を静かに見つめていた。
日和は小さなノアを、いつもより壊れそうなほど強く、強く抱きしめている。
師乃はモニターを開いていたが、その指先はキーボードの上で完全に静止し、何一つ打ち込むことができずにいた。
ソラは、そんな全員の姿を見渡した。
誰も動けない。誰も、この現実に言葉を与えられない。
その時、自動扉が静かに開き、モモがフロアに入ってきた。
いつもの、豪快で周囲を引っ張っていくような、あの力強い隊長の顔ではなかった。
カイがゆっくりと立ち上がり、モモの前に立った。
「……モモ」
モモが、虚ろな目で顔を上げた。
「……凪は」
「――強い子だったわよ」
モモは、掠れた声で静かに言った。
「最後まで……本当に、あの子らしかった。」
モモはそこで言葉を失った。
何かを言おうとして、
やめる。
もう一度口を開き、
「……ねえ」
と呟く。
「最後にね」
「重いのはダメって、言われたのよ」
カイは何も言わなかった。
「重力使いの私に向かってね」
「……」
「心まで重くなったらダメっすよ、だって」
モモは小さく笑った。
「最後まで、上手いこと言うのよ。あの子」
カイは静かに、モモの隣に座った。
慰めはしない。
ただ、隣にいた。
モモが窓の外の、荒れ果てた機構の敷地を見つめる。
「私ね……約束してたのよ。作戦が終わったら、また男に振られた話を朝まで聞かせてあげるって」
「…‥」
「……守れなかったわ」
短い沈黙。
「モモ」
「なによ」
「泣く時は1人で泣くなよ」
モモの動きが、ピタリと止まった。
ゆっくりと顔を巡らせ、カイの横顔を見つめる。
「……あんたが、そんなこと言うの?」
「肩くらいなら貸してやる」
モモの大きな瞳に、じわりと、堪えきれない大粒の涙が滲み出していった。




