第60話 コアの死守
能力者たちが次々と力を封じられる中――
ただ一人、前線で動き続けている男がいた。
カイだった。
旧AIコアの干渉など、彼の踏み込みを止める理由にはならなかった。
「関係ない。俺の身体は、俺のものだ」
カイが閃光となって幹部へと肉薄する。
「防げ!」
幹部の護衛が二人、前に飛び出してきた。
カイの刀が滑らかな半月を描く。肉体の重みをすべて乗せた一撃が一人を強烈に吹き飛ばし、その回転の勢いのまま、横から迫ったもう一人の装甲を深く切り裂いた。
残された最後の一人が、カイの圧倒的な気迫に気圧され、たまらず後退する。
幹部の目の前まで、あと一歩。
「これで終わりだ――!」
カイが渾身の力で床を蹴り、踏み込んだ。
敵は後退りをする。
その刹那。
「……浅はかだな、能力者」
幹部が旧AIコアを天に向けて、限界まで出力を開放した。
ドォォォォンッッッ!!!
それは炎や魔力の爆発ではなかった。空間そのものを激しく歪ませる、高電磁波の爆発だった。
視界が白光に染まり、強烈な衝撃波が倉庫全体を吹き飛ばす。
「カイさん……っ!!」
ソラの絶叫が響く中、カイの頑強な肉体が弾き飛ばされ、背後のコンクリートの壁へと激しく叩きつけられた。
カラン、と高い音を立てて、愛刀が手から離れ、床へと転がっていく。
「く、つ……!」
カイは壁に手をつき、必死に立ち上がろうとした。
幹部はそれを見下ろしながら、冷酷に出口へと歩を進めた。
「目的のコアは回収した。引き上げるぞ」
「待て……っ!」
カイは追いかけようとするが幹部たちは倉庫の外へと脱出し、待ち構えていた飛行型の無人機群に守られながら、夜空へと急速に浮上していく。
遠ざかっていく小さな光。
やがて、それらは暗雲の向こうへと完全に消え去り、見えなくなった。
カイは無言で刀を拾い上げた。
すでに追撃は間に合わない。
それだけを確認すると、静かに刀を握り直した。
無人機が一斉にその動きを止めたのは、それからすぐのことだった。
幹部が旧AIコアを遠方へと持ち去ったことで、現場の制御信号が完全に切断されたのだ。ガラガラと音を立てて、何十体もの鉄屑が床へと崩れ落ちていく。
機構に、あまりにも遅すぎる静寂が戻ってきた。
しかしーーー代償は大きすぎた。
中央制御室は半壊。
防衛システムの半分以上が機能停止。
東棟は無残に崩落し、そして――
旧AIコアが一個、完全に敵の手へと奪われた。




