第54話 中央制御室
中央制御室の奥。
師乃と九条は、御影から送られた配線図を頼りに、最深部の基盤区画へと辿り着いていた。
壁一面を埋め尽くす制御端末が、不気味な赤色に脈動している。
それはまるで巨大な心臓だった。
無数の電子コードが、画面上を生き物のように這い回っている。
「……侵食速度、さらに上がっています」
師乃の額を汗が伝う。
「旧AIコア側が、こちらの妨害に気づいた……!」
「止められるのか」
「止めます」
師乃が即答した。
御影から送られた配線図を開き、最深部の隔離回線を指差す。
「ここです。この二つの隔離回線を同時に切断できれば、侵入経路の七割を遮断できます」
「逆に失敗したら?」
「制御権を一気に奪われます」
「……分の悪い賭けだな。やれるか?」
「善処します」
九条が低く息を吐いた。
「……やるしかない、か」
師乃が精密基盤の隙間へ細い手を迷いなく差し込む。
バチバチと青白い火花が指先ではじけた。
「九条さん、タイミングを合わせてください」
「いつでもいい」
「――三、二、一、今です!」
バチンッ!!
激しい放電音が制御室を揺らした。
次の瞬間。
端末群を覆っていた赤い警告表示が、一気に半分以上消失する。
「ハッキング経路、七割を強制遮断!」
師乃が声を張り上げた。
しかし、残された端末群の赤色が、怒り狂ったかのように逆に禍々しく明滅を始めた。
「……っ、まだ止まってない!」
画面上の侵食率が再び上昇を始める。
九条が顔をしかめ、忌々しげに吐き捨てた。
「残り三割が、別ルートへ再接続してやがる……!」
「旧AIコアが、自律的に経路を書き換えています!」
師乃が目まぐるしく変わる次の座標を表示する。
「コア反応がさらに奥へ移りました! このままでは数分で再侵食されます!」
「案内しろ!」
二人は再び、赤く脈打つ制御室の奥へと駆け出した。




