第53話 北側廊下(第一部隊)
一方、北側回廊に移動した第一部隊が死闘を繰り広げていた。
カイが静かに刀を抜く。研ぎ澄まされた銀色の刀身が、非常灯の赤光を反射した。
トン、と床を蹴る。目にも留まらぬ一瞬の踏み込み。
カイは一体目の大型兵器の制御中枢を一刀両断する、すかさず二体目が巨大な駆動刃を振り下ろしてくるが、最小限の動きで身体を傾けて回避し、すれ違いざまにその胴体を鮮やかに切り裂いた。
「蓮、右側だ」
「了解ッ!」
蓮の両手から強烈な青白い電撃が放たれ、ダクトから這い出してきた小型ドローンの群れが一瞬にして消し炭になる。
「紫苑、上」
「わかった」
天井の通気口を突き破って降下してきた暗殺ドローンたちが、空中で紫苑の展開した絶対零度の氷に包まれ、床へと激突して粉々に砕け散った。
「師乃」
「――やっています!」
師乃が高度な空間魔法を展開し、廊下の奥から放たれた数発の誘導ミサイルを歪んだ空間の穴へと吸い込ませる。次の瞬間、全く別の無人の外壁へと転送し、機構に被害を出さずに霧散させた。
「ノア、大きくなって!」
後方で日和が震える手でノアを突き出す。
「了解クマ!!」
ボフンと煙を上げて巨大化したノアが、人間の大人を遥かに超える巨体で通路を完全に塞ぎ、押し寄せる無人機を肉球のツッパリで力任せに押し返していく。
トバリが低く鳴いた。
「……左の関節に古いパーツ使ってるホー! あそこ脆いホー!」
「ここにゃ!」
黒猫のクロエが日和の肩から弾丸のように飛び、大型機の脆弱な継ぎ目の配線を正確に突き刺して停止させる。
「左から、さらに別働隊が来ホー!」トバリが叫んだ。
「日和さん、左です!」
ソラの的確な指示に、日和が力強く頷く。
「ノア、お願いっ!」
日和が力強く頷く。彼女とぬいぐるみたちの呼吸は、完全に一つに噛み合っていた。
ソラは一歩引いた位置から、全員の動きをじっと見ていた。
次々に押し寄せる敵の物量。蓮の放つ雷撃の、ほんのわずかな死角となる角度からドローンが回り込もうとするのが見えた。
(届けっ……!)
ソラは蓮の背中に向かって強く意識を集中させた。
大丈夫だ。
蓮さんなら、絶対に届く――!
その瞬間、蓮の手から放たれていた真っ直ぐな雷撃の軌道が、まるで意思を持つ生き物のようにぐにゃりと歪んだ。本来なら物理的に届かないはずの死角の曲がり角の奥へと綺麗に回り込んで隠れていたドローンを完璧に撃ち抜いた。
蓮が驚愕して振り返る。
「おいソラ! 今、俺の雷の軌道、お前が無理やり曲げただろ!?」
「曲げてないですよ! 」
「はあ!? 俺、こんな変則的なコントロールの練習なんて一回もしたことないんだけど!」
「じゃあ、届いたんですね!良かった!」
蓮は少しだけ目を見開いてソラを見つめ、それから、すぐに不敵な笑みを浮かべて再び前を向いた。
「……へえ。俺、思ってたより結構使えるじゃん」
そのやり取りを前方で聞いていたカイが、小さく口角を上げる。
「ようやく、自覚したか」




