第52話 制御室近くの廊下
警告アラートが狂ったように鳴り響く中、中央制御室へと続く廊下は、完全に戦場と化していた。
天井のハッチから次々と湧き出す、無数の自律型戦闘ドローンと殺戮機械の群れ。
「チッ、次から次へとキリがねえな!」
蓮が苛立ち紛れに凄まじい電撃を放ち、迫るドローンの一隊を火花とともに爆砕する。
その隣では、カイが冷徹な太刀筋で敵を正確に両断し、日和とソラが背後を固め、押し寄せる敵を食い止める。
第一部隊と第三部隊の混成チームは必死の防戦を繰り広げていたが、敵の物量は圧倒的だった。
一歩も前は進めない
その時ーー
背後の隔壁が開き、鋭い銃声が戦場を切り裂いた。
ガガガガンッ!!!
放たれた銃弾は、ドローンの装甲を紙切れのようにつらぬいていく。
「遅くなりました」
煙を吹く銃口を構え、毅然と現れたのは九条──第二部隊だった。
「九条、モモ! こっちは俺らが食い止める! 」
カイが怒鳴る。
「敵の狙いは中央制御室だ、師乃を連れていけ!」
九条は即座に頷いた。
「第二、第三部隊、最短ルートで中央制御室へ向かいます!」
「了解! ……師乃、行くわよ!」
師乃かモニターを閉じ、短く頷く。
第一部隊がドローンの大群を力任せに押し戻し、一瞬の“隙間”を作る。
「走れぇッ!!」
カイの咆哮を背に受けながら、第二・第三部隊とシノの面々は、爆煙の立ち込める廊下を全力で駆け抜けた。
◇
だが、中央制御室まであと数ブロックという分岐路に差し掛かったその時。
前方から地響きを立てて、さらに大型の重装甲戦闘機械が姿を現した。
さらに背後からも、回り込んできたドローンの群れが迫る。
「くそっ、挟み撃ちか……!」
完全に包囲され、全員の足が止まりかけた。
「──ここは私に任せて!」
凛とした声とともに、モモが一歩前に出、行く手を阻む重装甲機械の前に立ちはだかる。
「凪っ」
「はいなっ!」
モモの能力で周囲に散乱していた瓦礫や金属片が一斉に浮き上がり、異常な重量を帯びた。
その瞬間、凪が両手を振り抜く。
奔流のような暴風が吹き荒れ、重力で加速された瓦礫の群れを砲弾のように敵へ叩き込んだ
重装甲機械が大きくよろめく。
「ここであたしたち全員が足を止めたら、それこそ敵の思う壺でしょ」
モモは視線を逸らさない
「あたしがこのデカブツを引き受ける。第三部隊は後方の雑魚を押さえて!」
「了解!」
部下たちが即座に散開する。
モモはそのまま九条と師乃へ振り返った。
「九条、師乃! 二人で先に行って!」
九条は一瞬だけモモの背中を見つめた。
そして迷いを切り捨てるように銃を構える。
「……行きますよ、師乃さん」
「ええ」
モモと第三部隊が巻き起こす激しい戦闘の爆音を背中で聞きながら、九条とシノの二人は、機構の命運が懸かった最深部へと、さらに速度を上げて突き進んでいった。




