第50話 緊急事態
「迎え撃つ!」
カイが真っ先に飛び出した。
一閃。
先頭の大型機の胴体が真っ二つに裂ける。
「蓮、左!」
「了解ッ!」
青白い雷撃が廊下を駆け抜け、突入してきた小型ドローンをまとめて撃ち落とした。
「止めろ! 一機も奥へ通すな!」
しかし、敵の数は圧倒的だった。
破壊しても、破壊しても、後方から新たな無人機が押し寄せる。
「カイさん、このままじゃ数で押し切られます!」
ソラの叫びに、カイが舌打ちする。
「チッ……中央制御室が本命だ。急ぐぞ!」
第一部隊は押し寄せる無人機を押し返しながら、中央制御室へ続く回廊へと駆け出した。
◇
中央制御室に向かって廊下を進むと、
すでに「第三部隊」が完璧な布陣で展開していた。
「……来なさい、鉄屑ども」
赤黒い煙が立ち込める中、第三部隊は押し寄せる無人機の軍勢を完全に圧倒していた。
一陣の猛烈な突風が戦場を駆け抜ける。
「はいはーい! 凪ちゃんが通りまーす!」
視認できるほどの白い風の筋が空気を切り裂き、突入してきた十数体のドローンを一瞬にしてバラバラに吹き飛ばした。
そこへ、部隊長のモモが鋭い視線と共に右手を天に掲げる。
「……そこ、動きを止めなさい」
重力場が反転し、後方から迫っていた大型無人機がふわりと宙に浮いた。
「凪、今よ!」
「はいなっ!!」
凪が放った超高圧の風の嵐が、無防備に浮いた大型機を背後の壁へと猛烈な勢いで叩きつけた。火花を散らしながら、鉄の塊が完全に沈黙する。
「っしゃあ! さすがモモ隊長、雑魚掃除が芸術的!」
凪は額の汗を拭いながら、いつものように明るく、生意気そうな笑顔で振り返った。
「っていうか、隊長やっぱり今日マジで強いっすよ! 動きのキレが尋常じゃない。やっぱり、男に振られた直後の隊長が世界で一番最強っすね!」
「あんたね、戦場でプライベートな話をしてるんじゃないわよ。うるさいわね!」
「あはは! 愚痴ならこの戦闘が終わった後に、いくらでも朝まで聞いてあげますから! 約束っすよ!」
モモは呆れたように眉を寄せた。
「……あんた、ほんと昔からうるさいわね」
「えへへ。だって隊長、放っとくと一人で抱え込むじゃないっすか」
一瞬だけ。
モモの目が、ほんの少し柔らかく揺れた。
「……生意気」
凪が再び笑い、軽快に風を纏って次の獲物へと走っていく。
モモは呆れたように息を吐きながらも、その頼もしい後ろ姿を見つめ、口元に少しだけ信頼に満ちた笑みを浮かべた。




