第32話 番外編 モモと凪
第三部隊のラウンジは、異様な静けさに包まれていた。
隊員たちは誰一人として大声を出さない。
とにかく、自分の存在を消すかの如く静かにしていた…
空気が、重い。
「……隊長、また振られたらしい」
「マジかよ……今日、重力何倍だ……?」
「さっき、自販機が天井にめり込んでた」
「近づくな。死ぬぞ」
隊員たちがヒソヒソと囁く中、
ラウンジ中央のソファでは、モモがこの世の終わりみたいな顔で沈んでいた。
「……距離を置きたいって何よ」
ピシ、と床が軋む。
「ちゃんと我慢したのに!」
メキメキ……と壁の時計が浮き始めた。
「隊長!! 重力漏れてます!!」
第三部隊員たちが慌てて机にしがみつく。
その時だった。
「はい、アイスです」
凪がコンビニ袋を片手に無表情で現れた。
モモがジト目で睨む。
「……慰め?」
「避難誘導です」
「誰から」
「一般隊員からです。これ以上重力が増したら訓練棟が沈みます」
凪は淡々とソーダバーを差し出した。
「はい」
「……チョコミントじゃない」
「昨日、彼の歯ブラシがって言ってたので」
「そういうとこよあんた!!」
ドゴォン!!
一瞬だけ重力が跳ね上がり、隊員たちが床に叩き伏せられる。
「隊長!! 感情で重力操作しないでください!!」
「無理よ!! 失恋中なのよこっちは!!」
凪は深々とため息を吐きながら、
無言でパンを差し出した。
「ほら、私のパンもあげますから。うさちゃんですよ」
うさちゃんと言う言葉にモモがぴくっとする。
「……で、今回は何したんです」
「おはようのメッセージ送っただけ」
「何件」
「……15だけ」
「何分で」
「えっ…5分かな」
「実際は」
「3分…」
「3分で15件はホラーです」
「愛よ!!」
ドンッ!! と重力が跳ね、
隊員たちが再び床に沈んだ。
「だから感情で重力を操作しないでください!!」
どこまでも重たいモモ隊長であった。




