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Boundary  作者: 楓シロ
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第31話 番外編 真面目すぎたちの「じゆう研究」

ソラ 

「はーい、みなさんこんにちは! 番外編司会者のソラです! 今日はなんと、いつもピシッと決まっている『第二部隊』の作戦会議室に極秘取材に来ています! ……あ、どうやら奥で真剣な話し合いをしているようですよ?」


クロエ 

「おいらも潜入捜査に協力してやるニャ。しっかし、全員お通夜みたいな顔して何してるんだニャ?」


九条 

「――以上が、先日の任務における我が部隊の反省点だ。第一部隊のカイからも指摘された通り、我々は『少し真面目すぎる』らしい。そこで、我が部隊の柔軟性を養うため、本日から『力を抜く訓練』を行おうと思う。何か有効なアプローチがあれば、各自意見を募る!」


第二隊員A

「はい! では、いつもの15分休憩を『5分延長』して20分にしてみてはいかがでしょうか!?」


九条(腕を組んで深く頷く) 

「なるほど、5分の猶予か……。だが、その5分間でダラけすぎてしまい、次の任務への初動が遅れるリスクはないか?」


第二隊員B

「そこは、4分間を完全脱力に充て、残りの1分で深呼吸をして精神をトップギアに戻すという『脱力マニュアル』を作成すれば解決するかと!」


九条

「素晴らしい。ではその方向で規律を策定しよう」


クロエ

「な、なぁソラ……あいつら、本気で言ってるのかニャ……?」


ソラ(苦笑いしながらカメラを振り返る)

「ええと……『力を抜く』ために新しい規律とマニュアルを作って『訓練』しちゃうあたり、本当に第二部隊の皆さんらしいというか、なんというか……」


クロエ

「ただのアホなのニャ。力の抜き方くらい、そこらへんの野良猫に習うといいニャ」


第二隊員C

「九条さん、発想を根本から変えてみるべきです。いっそのこと、あの第一部隊を見習って、我が部隊にも『自由』という概念を取り入れてみては?」


九条

「おお……なるほど。『自由』か」


第二隊員A

「じ、自由……?」


第二隊員B

「自由……だと? それは一体、どういうタイムスケジュールで動く概念なんだ?」


第二隊員C

「ええと、つまり……その、時計を見ずに、自分の好きなタイミングで、好きなことをするというか……」


九条

「自分の好きなタイミング、だと……!? 脳内にかかる負荷をあらかじめ計算しておかねば、不測の事態に対応できんぞ。おい、すぐに『自由行動時における想定リスク一覧表』を作成しろ!」


ソラ

「あちゃー……自由という言葉の定義について、ものすごい熱量でディベートが始まっちゃいましたね……」


クロエ

「本末転倒とはまさにこのことなのニャ。あいつら一回脳みそ冷凍させた方がいいニャ」


「おーい、何やってんのー? 廊下までお固い声が響いてるよ〜」


ソラ

「あ、蓮さん! 実は第二の皆さんが、力を抜くために何をすればいいかで泥沼にハマってるんです」


「へぇ〜、相変わらずだねぇ。深く考えないでさ、とりあえずゲームとかしてみたら〜? 楽しいし、頭空っぽにできるよ?」


九条(眼鏡をキラーンと光らせて真顔になる)

「……げぇむ」


第二隊員一同

「……ゲーム(娯楽・電子空間における疑似戦闘演習)……!」


  ◇


【数時間後:第二部隊・シミュレーションルーム】

 巨大モニターには、大人気格闘対戦ゲームの画面が映し出されている。

 その前で、九条をはじめとする第二部隊員全員が、軍隊のように一糸乱れぬ姿勢で正座していた。

全員、目が血走っている。


九条

「いいか、画面中央のカウントダウンがゼロになった瞬間、1フレームの狂いもなく弱パンチを叩き込め。これが我が部隊の基本戦術となる」


第二隊員A

「九条さん! ですが相手がジャンプで回避した場合、このコンボは確定反撃を喰らいます! ここはあえてガードを固め、相手のゲージを削るミリ単位の『遅延行為サボり』を組み込むべきです!」


第二隊員B

「いや、そこは確率論だ! 相手の右フックの発生速度を考慮すれば、ここはしゃがみ一択! 0.5秒の脱力リラックスを挟むことで、次のカウンターの威力が1.2倍になる!」


九条

「待て、そのリラックスは本当に最適解か? 筋電図を測定してもう一度議論し直す必要がある!」


第二隊員A

「くっ……! 今のボタン入力の連携、悪くはありませんでした! 確実に相手のガードの隙を突いていす!」


第二隊員B

「おいA、お前……さっきのセットプレイより、コンボ移行の反応速度が0.2秒上がってるぞ! 脱力リラックスの効果が早くも数値に出始めている!」


九条

「素晴らしいぞ二人とも! 力を抜くことで神経伝達速度が向上するとは、これぞまさに『脱力の最適化』だ!」


クロエ(呆れ果てて前足で顔を覆う)

「……こいつら、間違いなく病気だニャ」


ソラ

「あはは……。息抜きのジャンルすら、第二部隊の皆さんはかなり真剣に『研究』して戦闘技術にしちゃった模様です……」


第二部隊一同(立ち上がって熱い握手を交わす)

「我々はついに、第一部隊式の『息の抜き方』を完全に会得しつつあるぞ……!!」


日和

「――ねぇ、ちょっとそのコントローラー貸して」


第二部隊一同

「「「っ!?」」」

(一斉にビクゥッと直立不動になる)


ソラ

「あ、日和先輩! いつからそこに?」


日和(無表情のままノアを小脇に抱え、空いた手でコントローラーを受け取る)

「第一部隊式ってそういうのじゃないから。……見てて」

 日和が対戦画面に向かった。


 第二部隊がフレーム単位で計算し、血の滲むような特訓で構築した無敵のコンボ理論。

 それに対して日和は、一切のコンボを使わなかった。ただ、地味で、リーチが長くて、相手が一番イライラする嫌がらせのような単発技だけを、絶妙な間合いでポチ、ポチ、と虚無の目で押し続ける。


画面の相手キャラクターが、ハメ殺されるようにピヨり、そのままパーフェクトで爆発した。


日和

「相手が一番嫌なタイミングで、一番嫌なことを延々と繰り返して、精神から順番に壊せばいいだけだよ」


第二部隊一同(顔面蒼白でガタガタ震え出す)

「「「え、えぐすぎる……!!!!」」」


九条(静かに眼鏡を外して涙を拭う)

「これが、第一部隊の『自由』の深淵……。我々の生ぬるいマニュアルなど、一瞬で瓦解するわけだ……」


クロエ

「いや、それはただの日和の性格の悪さだニャ!! 息抜きでもなんでもないニャ!」


ソラ

「あはは……。どうやら第二部隊の皆さんが『ゲームで楽しく息抜き』できるようになるまでには、まだまだ果てしない訓練が必要みたいです……。以上、現場からそらがお届けしました〜。」

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