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Boundary  作者: 楓シロ
18/23

第18話  反省という名の否定

 その後、必要なデータをすべて回収し終えた二つの部隊は、旧市街の建物を後にした。


 帰り道、夕暮れの街を九条とカイは並んで歩いていた。


「紫苑のことだが」

「ん」

「私はあいつのために言っているんだ。出力を抑えろというのも、規律を守れというのも、全てあいつが失敗して傷つかないための『保護』だ」

「知ってるよ」

「なら、なぜあいつは……あんな顔をする」

「どんな顔」

「……今にも、自分で自分を壊しそうな顔だ」

 

 カイは少し黙ったあと、小さく鼻で笑った。

「お前さ。あいつが失敗する前提で喋ってる」

「何?」

「『傷つかないように』って言ってる時点で、

もう“失敗する側”に置いてんだよ」


 九条が足を止める。

「私は現実的な話をしている。紫苑の力は強すぎる。制御を誤れば、本人も周囲も傷つく」

「だから先に抑え込む?」

「未熟なまま暴走するよりはマシだ」


 カイはようやく立ち止まり、振り返った。

「……反省したら、人間は改善できると思ってんだろ」

「反省は成長に必要だ」

「ほどほどならな」


 カイはポケットに手を突っ込んだまま続ける。

「でもあいつ、もう“反省”じゃねぇよ。

四六時中、自分の粗探ししてるだけだ」

 九条は言葉を失う。


「あいつさ、成功した時の話しないだろ」

「それが何だ」

「褒められても嬉しそうな顔しねぇしな」

「……」

「お前、ずっと“失敗しない方法”ばっか教えてる」


 夕焼けの光が、二人の間に長い影を落とす。

「模造コアみたいなのは、

ああいう“自分を閉じ込めてる奴”が一番食いやすい」

 九条は苦々しく息を吐いた。

「……では、私は何も言うなというのか」

「そうは言ってねぇよ」


 カイは肩を竦める。

「ただ、お前んとこ、

“正しく閉じ込める”のは上手いけど、出してやるのは下手そうだなって話」

「……っ」


 カイはそれだけ言って、再びぷらぷらと歩き出した。

 九条は、その背中をただ見送るしかなかった。


 雑で、規律もなく、統率も適当。

なのに第一部隊の連中は、どこか息がしやすそうに見える。

 

 なぜだ。

 その疑問だけが、九条の胸に小さな棘のように残り続けていた。


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