第18話 反省という名の否定
その後、必要なデータをすべて回収し終えた二つの部隊は、旧市街の建物を後にした。
帰り道、夕暮れの街を九条とカイは並んで歩いていた。
「紫苑のことだが」
「ん」
「私はあいつのために言っているんだ。出力を抑えろというのも、規律を守れというのも、全てあいつが失敗して傷つかないための『保護』だ」
「知ってるよ」
「なら、なぜあいつは……あんな顔をする」
「どんな顔」
「……今にも、自分で自分を壊しそうな顔だ」
カイは少し黙ったあと、小さく鼻で笑った。
「お前さ。あいつが失敗する前提で喋ってる」
「何?」
「『傷つかないように』って言ってる時点で、
もう“失敗する側”に置いてんだよ」
九条が足を止める。
「私は現実的な話をしている。紫苑の力は強すぎる。制御を誤れば、本人も周囲も傷つく」
「だから先に抑え込む?」
「未熟なまま暴走するよりはマシだ」
カイはようやく立ち止まり、振り返った。
「……反省したら、人間は改善できると思ってんだろ」
「反省は成長に必要だ」
「ほどほどならな」
カイはポケットに手を突っ込んだまま続ける。
「でもあいつ、もう“反省”じゃねぇよ。
四六時中、自分の粗探ししてるだけだ」
九条は言葉を失う。
「あいつさ、成功した時の話しないだろ」
「それが何だ」
「褒められても嬉しそうな顔しねぇしな」
「……」
「お前、ずっと“失敗しない方法”ばっか教えてる」
夕焼けの光が、二人の間に長い影を落とす。
「模造コアみたいなのは、
ああいう“自分を閉じ込めてる奴”が一番食いやすい」
九条は苦々しく息を吐いた。
「……では、私は何も言うなというのか」
「そうは言ってねぇよ」
カイは肩を竦める。
「ただ、お前んとこ、
“正しく閉じ込める”のは上手いけど、出してやるのは下手そうだなって話」
「……っ」
カイはそれだけ言って、再びぷらぷらと歩き出した。
九条は、その背中をただ見送るしかなかった。
雑で、規律もなく、統率も適当。
なのに第一部隊の連中は、どこか息がしやすそうに見える。
なぜだ。
その疑問だけが、九条の胸に小さな棘のように残り続けていた。




