第15話 第二部隊 九条隊長
九条隊長が第一部隊の詰め所に現れたのは、朝食の時だった。
ソラは師乃が作った朝食を食べながら、入り口を見て動きを止める。
シワ一つない制服、きっちり整えた黒髪、定規で測ったように真っすぐな背中。三十代前半くらいだろうか。見るからに「規則の塊」みたいな男性だった。
ソラは思わず背筋を伸ばした。
カイはまだ眠そうな目で、マグカップを持ったまま一瞥する。
「あー、出たわ苦情隊長」
「その呼び方をやめろと何度言えばわかる」
九条が深くため息をつき、モニターを展開してカイにみせた。
「報告書だ。先週の廃墟区域の件。記載漏れが多すぎる。ここ、ここ、そしてここもだ。」
「あー」
カイはモニターに目もくれず手を振る。
「テキトーに補完しといて」
「『お前』が書け。これは公的な記録だ」
九条の声が低くなった。
「お前の部隊の行動が正確に記録されなければ、上層部からの評価も保護も受けられない。部下のためを思うならーー」
「うちの部下はそんなん気にしねぇよ」
「気にする、しないの問題ではない!」
「面倒くさい」
「面倒くさいで済む話じゃない。これは記録だ。後から証拠になる」
ソファでは蓮がクスクスと楽しそうに二人の掛け合いを見ており、日和はノアを抱えたまま静かにトーストを齧っている。師乃が慣れた様子で九条に一礼した。
「後ほど私が精査して提出します、九条隊長」
「すまない、師乃……」
九条はこめかみを押さえた。
「なぜこの部隊は、お前がいないと秒で瓦解するんだ?」
「師乃が優秀だからだろ」とカイ。
「お前が雑すぎるからだ!」
「お、意見が一致したな」
ハハ、と笑うカイを見て、九条は本気で頭痛を堪えるように目を閉じた。
九条隊長は最後にソラを鋭い一瞥で牽制すると、「遅れるなよ」と言い残して詰め所を去っていった。




