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現在―
微弱な音波で、建物が揺れていた。
ガクは、短剣を構え、建物に入る。なかには黒い影。黒いフードを被り、黒い装具を構えた人物。その周囲には、数人の騎士。
「ソーニャ……他の皆も無事だったんですね」
ガクは、息を吐き、短剣を仕舞う。
騎士たちは武装を解き、ガクの肩を叩く。
ソーニャも、ガクを見て、表情を緩ませる。
「ごうりゅうできて、よかった」
ソーニャは、大きく息を吐き、その場に座り込んだ。騎士団長と共に、ここに来て、《激流》の攻撃を受け、バラバラになっていた。
「はぐれた時の合図を決めててよかった……」
ソーニャが小さく微笑み、
「とんだ復帰戦になっちゃったね」
ガクが言うと、ソーニャは、照れくさそうにうなずく。異能殺しとの戦いから数か月。傷を治し、戦線に復帰するまで、時間が掛かってしまった。
「ちゆき、たべものをさがしにいった。もうすぐかえってくる」
ガクは、チユキの名を聞き、大きく息を吐く。
―無理しちゃって、チユキめ
「みんなと、はやく、ごうりゅうしよう」
「そうだね」
ガクは、周囲を見渡し、
「ここは、変な臭いがする……誰もかれもが、殺意を抱いている。異常だよ」
ガクは、予備品の剣を受け取り、また歩き出す。
―とりあえず、離脱だ
ガクは、元いた方向に戻る。建物から出て、周囲を見る。
数メートル先に、白い影。
白いマントをはためかせ、長身の人物が立っていた。髪をオールバックにした中年の男で、その姿は正に騎士と言える。
「フェルグス!」
ガクは、騎士団長の名を呼ぶ。フェルグス・ゼーフェリンク。北部同盟内で、最も権威のある騎士。ガクの恩人。
フェルグスは、ハッとし、持っていた、何かを捨てる。ごろり、と転がったのは、人の首。
「え……」
ぼうぜんとするガクの目に移ったのは、フェルグスの顔。黒い顔料で塗りつぶされ、目だけが白くぎょろぎょろと動いている―正気とは思えなかった。
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