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数日前―
北部同盟中央区、王宮。
フェルグスは、王(北部同盟内で最も権威のある領主を形式上、そう呼んでいる)と会っていた。
「異能殺しの一件、あれは痛かったよ」
王は、髭をなでながら言う。初老の男性で、中肉中背で、眠そうな目以外に特徴はない。
「申し訳ありません……」
「ワシは、お前を責めてはいない。ソーニャ・ダーンの受入にも成功しているし、よくやっている方だろう。だがな―」
王の眼が冷たく光り、
「―他の地区の領主は、そうは考えていない。異能殺しによる殺戮を大きな失態だと考えている」
「この地位をはく奪するのですか?」
「いや、ワシはそれを望んでいない。お前が領主を辞めれば、お前が推し進める異能特区も水の泡だ。それだけは防がねばならん」
王は、窓から中央区を眺め、
「お前を降ろし、異能特区の構想を白紙にしようとする連中は確かにいる」
「北部同盟内に、ですか?」
フェルグスが苦々しい顔で聞き、王も同じ顔で、
「そうだ。もしかすると、異能殺しが手際よく、中央区へ入り込めたのも、彼らの協力があったからかもしれん」
「アイメルト家の再来……」
王は鼻で笑い、
「皮肉なものよ。《業火》に何十人、何百人と焼き殺されようと、我々は異能への欲を無くすことができない。それどころか、仇敵のアイメルトに似始めているときた」
フェルグスは歯噛みし、
「それだけは止めなければなりません」
王も肯き、
「ワシもそう思う。だが、そのためには、お前がこれから失敗をしないことが条件になる」
「理解しています」
「それと、《箱入りの聖女》、あれの使用権限にゲオルクも追加する」
フェルグスは、眉をひそめる。ゲオルクは、フェルグスの腹違いの弟である。どこかで騎士団を率いていると聞いていたが、それほどまで高位ではないだろう。
《箱入りの聖女》―それは大戦を終わらせるきっかけを作り出し、同時に異能力者の力を発揮し、世界に異能を知らしめた救世主。その精神は眠らされ、数人の許諾がないと、その意識は目覚めることがない。
―《箱入りの聖女》を目覚めさせる権限をゲオルクに? なぜ?
「異能特区を白紙化したい連中の神輿なんだよ、ゲオルクは。そして、彼に《箱入りの聖女》の使用権限を与えれば、連中の気も晴れる」
「一時的なガス抜き……ですか」
「そうだ」
「フェルグス、あと半年の間、失敗は許されない。それが、異能の未来にも直結する。頼んだぞ」
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