5-9
ソフィアは、《業火》のすぐ後ろまで走ってきた。
ー俺だけでは何もできない
《業火》は心のなかでつぶやく。そして、ソフィアにすがるように、
「何か、策はありませんか?」
ソフィアはうなずき、《業火》は笑う。
―ソフィアは、いつだって、奇策で、何もかもを解決してくれる
「爆弾を私に巻き付けて」
ソフィアが背中を、《業火》に向ける。
「どういうことです……」
「〈加護〉で守られているのは、青髭だけ。おそらく、私なら発火させられる。私が、奴に近接戦を挑む。取っ組み合った瞬間、爆破して」
「何を……そんなことできるわけがないでしょう!」
ソフィアは、
「子供たちと、お前の命がかかっている! お前が合図をした瞬間、私は鎧を脱ぎ、階下に飛び降りるから!」
《業火》は歯噛みする。ソフィアの氷を思わせる冷たい瞳が《業火》をにらみつける。
一つ間違えれば、ソフィアを焼き殺してしまうかもしれない。その事実に、脳が反対するように、ソフィアとの記憶を呼び覚ます。
前王の軍勢に追われ、冷たい泥のなかに潜んだこともあった。血を失い、体温が失われていくなか、お互いの名を呼び合い、必死に意識を保った。
親友が拷問の末、死んだ時もお互いに言葉をかけ合い、何とか自暴自棄にならずに済んだ。
《業火》は、歯噛みし、うめき声を上げる。
―お前だけが、俺を人としてあつかってくれたんだ……ソフィア。お前を焼くことはできない。俺は、お前の描く未来に賭けたんだ
ソフィアの矢は尽き、青髭は目の前にいた。
「他の案は!」
《業火》は通路を焼き、とっさに青髭が来るのを阻害。
「無駄なことを……」
青髭は、通路が通れず、苦渋の声を出す。そして、素早く後退し、迂回してここまで来るべく、走り出した。
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