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青髭は、一瞬で接近。
《業火》は、そのスピードに対応できない。激しく動揺していたのもあるが、青髭のスピードは異常だった。とっさに剣を避けるも、頬が削げる。
《業火》は持っていた小さな爆弾を投げる。光と衝撃波で昏倒させるだけの非殺傷武器だ。とはいえ、《業火》の異能力があれば、遠隔かつ自在に起爆できるので、あなどれない。
《業火》は異能を発動し、発火。だが、妙な違和感。火が、つかない。まるで、発火はできない、とでもいうかのように―
爆弾を打ち払い、青髭が接近。《業火》の目の前に、剣が迫る。斬られる、そう思った瞬間、ソフィアの声が耳を打つ。
「……動かないで!」
しゅん、と音がし、矢が飛んでくる。それをよけるべく、青髭が後退し、事なきを得る。
ソフィアが弓を構え、青髭を狙っている。
青髭は見えているかのように短剣を盾にし、こちらをうかがっている。
《業火》は、肩に痛みを覚える。わずかに剣先が掠っていた。だが、それよりも気になるのは、先ほどの違和感だ。
―なぜ、発火しなかった?……湿気がある訳でも、風がある訳でもない。なぜ……?
「どうしたの?」
ソフィアが叫び、《業火》に聴く。一瞬で、異変を察知し、《業火》がそれに動揺していることも悟ったのだ。
「発火しない……!」
《業火》は、短剣を抜き、青髭と距離を取る。
青髭は、
「神の加護だ。お前の《業火》は効かない」
青髭は異様なスピードで、剣を振りまわす。その軌道は、全く見えない。白く、ぼんやりした「何か」が肩や腕に触れるのが辛うじてわかるだけだ。
《業火》はジリジリと後退しながら、なんとか短剣を盾にし、急所を守る。気が付くと、肩、手首、腕から血がダラダラと流れ、痺れるような痛みが全身を覆っていた。
青髭は攻撃の手をゆるめない。もはや、本当に盲目なのか疑わしかった。
《業火》は、いちかばちかで体術をしかける。瞬時に体勢を落とし、足払いをかける。青髭は何のことはなく、避ける。そして、下段に向け、剣を薙ぎ払う。
《業火》は地面を転がって攻撃を回避。その瞬間、下の階にいる子供たちが見える。全員が、祈りを捧げるようなポーズをとっていた。
主のご加護がありますように、という祈りのポーズ……あれが何か関係があるのか?
ソフィアが矢で、青髭を攻撃する。なんとか、青髭を《業火》から距離を離すことに成功する。
ソフィアは、
「《心髄共鳴》だ! 青髭には、神の加護があるという強力な思い込みが、ここにいる異能者全員に感染しているんだ!」
―さすがソフィア……冴えてるな
《業火》は唇を吊り上げる。タネが分かっただけだが、ほんのわずかに希望が見えた。それだけでも大きな違いだ。
青髭は奇蹟の人である=神の加護がある。つまり、神の祝福である異能は当てることはできない、と子供たちに洗脳をしたのだろう。子供のなかに、強い影響力を持つ者がおり、異能者である《業火》も影響を受けているのだ。
ソフィアは絶えず矢を放ち、青髭を釘付けにする。青髭は、矢を、剣で弾き、叩き斬る。そうやって、じりじりと、ふたりに近づいてくる。
―もし、青髭の加護を解こうと思えば、下の階の子供たちを全員焼き殺すしかない
《業火》は、自分のなかに浮かんだ策を必死に消そうとする。だが、それしか案は無いように思えた。




