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【1】
深夜、うっそうとした森に《業火》は居た。すぐそばには、ソフィアとその部下が数人いる。
騎士たちは、全員が若く、真剣な表情であった。《業火》は彼らを見て、ほほ笑む。
全員が、ソフィアの新体制で王立騎士団に入った者たちで、もともとは農奴か傭兵、商人の息子もいる。
ソフィアは、家柄に関係なく才能のある者を重要な役職に就けるようにしていた。異能に傾倒していた時代を引きずる貴族を一掃し、世襲にとらわれ腐敗した政治を変える―それがソフィアの方針だ。
これで弟や妹に腹いっぱい食べさせられる―そう一人の騎士が言ったのを《業火》は忘れられなかった。着実に世界が変わっていくのを感じたのだ。
―未来は、君たちのなかにある
王妃に言われ、目を輝かせていた青年たちは、いやま高い士気で任務に就いている。安全な任務ではないが、皆が志願した。
《業火》は、王妃の顔を見る。
―ソフィア、お前が世界を変えたんだ。お前と変えていくんだ
【2】
違法な異能研究を行っているという施設は、森のなかにあった。表向きは救貧院だという。《業火》たちの任務は、子供たちの救助と、首謀者の逮捕だ。
ソフィアが王座についてから、異能研究は大幅に規制された。人道的かつ、身体への負荷を最小限にした研究を、国が細々とやっているだけだ。
だが、それに反抗するように、違法な異能研究を進める者はたびたび現れた。そして、取り締まるほどに巧妙化した。
前王とソフィアとの異能者の扱いの違い、それが違法な研究を発生させる原因であった。
異能者は、年に数人~数十人、自然に生まれてしまう。前王にとって、異能者とは、自然に発生し、かつ人工的に生み出すことのできる「兵器」であり「資源」だった。
だが、ソフィアは、そうではないと考えていた。彼らにも人格があり、人生があり、権利がある。彼らも人なのだ―ソフィアは、そう宣言し、「異能者を人として扱う為の」研究を始めた。
それに対し、前王の配下やそれに影響された者たちは、「異能者を道具として扱う為の」研究を行おうとし、反旗を翻しているのだ。
ソフィアは、彼らを捕らえ、情報を引き出した後、見せしめにして処刑していた。異能を濫用しようとすると、こうなると知らしめるためだ。
だが、理由はどうあれ「異能を研究している」というのは、ソフィアも反逆派も同じだ。ソフィア自身も、自分が完全な正義だとは考えていなかった。
異能の研究は、それがどんなに人道的で、小規模でも、非常に危うい要素を含んでいるとソフィアと《業火》は、そう考えていた。異能は人を狂わす。
もし、それを使いこなせるとしたら、凄まじい英知か、桁外れの自制心が必要なのだ。
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