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1-9

 心は燃えても肉体は弱い  「新約聖書」マタイの福音書 26章41節

挿絵(By みてみん)





 ―これを生み出したのは、俺なのか?


 《業火(インフェルノ)》は、ぽつりとつぶやく。


 目の前では、自身の異能力(スキル)が発動していた。《業火》は、異能を最大火力で使うとどうなるかは知らなかった。今までは。


 《業火》がまず感じたもの、それは強烈(きょうれつ)な閃光だった。世界から色が消え、全てが白く染めあげられる。何もかもの輪郭(りんかく)が溶ける。人々の影が伸(の)び、真っ黒な蛇(へび)のようにのびていく。


 熱が塊となって《業火》に激突(げきとつ)―うめき声を上げる間もなく、両足は地面から離れ、体は宙で舞まっていた。


 遠くから音が聴こえる。少女が悲鳴をあげるような、甲高い音。世界そのものが炸裂(さくれつ)したかのような音。


 《業火》は意識を取りもどし、まわりを見る。緑、青、黄色、赤、そして、全てをぬりつぶすような明るい白―炎が色を変え、あたりで踊っている。


 強烈な熱波で、《業火》は、あわてて鎧を脱ぐ。湯気(ゆげ)が立ちのぼるのが見えるかのようだった。爆心地(グラウンド・ゼロ)の近くにいた者は、重度の火傷を負っているかもしれない―冷たい直感が背筋を走る。


 あたり一体は火の海となり、黒々とした煙が空を汚していく。ふわふわと灰が落ちてきた。白い炎が建物の上でうねるように踊っている。まるで太陽が落ちてきたかのようだった。


 《業火》は瓦礫(がれき)をどける。腕の一部が水膨(みずぶく)れを起こしていた。その指は震え、言葉が出なかった。胸の鼓動(こどう)が速まり、呼吸が速まる。


 ―こ(・)れ(・)を(・)生(・)み(・)出(・)し(・)た(・)の(・)は(・)、(・)本(・)当(・)に(・)俺(・)な(・)の(・)か(・)?

 読んで頂きありがとうございます。

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