8-9
ガクは、一つだけ打開策を思いついていた。一か八の博打策。
先ほど、〈天恩〉が移動したとき、風が止んだ。つまり、風を起こすときは、飛べない。逆に、飛ぶなら、風は起こせない。
―やるしかない
ガクは、背中から冷たい汗が流れるのを感じた。
「《業火》を使う必要はありません」
言いながら、ガクは、弓を肩にかける。そして、剣を構える。
「加速して、斬るだけです」
ガクは、啖呵を切る。そして、走る体勢を取る。
ふっ、と<天恩>が微笑む。
「泥人形ごときが、僕に勝てるのか?」
<天恩>が大きく飛翔し、天使の如く浮かび上がる。ガクは目を大きく見開く。
―今しかない!
ガクは、<加速>を発動。瞬時に弓を構え、矢を装填。
〈天恩〉が飛翔を続けるべく、羽をはばたかせた瞬間、矢を放つ。3連射だ。
3本の矢、それが〈天恩〉に向け、放たれる。〈天恩〉は、飛翔を止め、風で軌道をそらそうとする。
加速による、異様な速度の武器の切り替え、一瞬だけ生まれる誤差。〈天恩〉から一メートル程まで矢が接近。〈天恩〉は、それを風で逸らそうとするが、飛翔とどちらを優先するか、一瞬、迷ってしまう。
矢の軌道は、<天恩>から外れる。だが、それでも、もし矢を曲げることができれば、当たる範囲にあった。
ガクは、集中力を全て使い、風を読む。
矢についている羽根を焼き、3枚から1枚にすることで、矢の回転に影響を与え、進行方向を大きく変えるのだ。威力は落ちるが、<天恩>がやっているように「矢の進行方向を曲げる」ことが出来る。それを利用し、<天恩>を狙撃するのだ。
異様な集中力―回転する矢を知覚、羽の震えを感じ取る。余りの集中に、思わず嘔吐する。三本のうち、一本の矢が殺傷範囲にあることを感じる。《業火》を発動。1枚だけ羽根を焼く。
羽根が焼けたことで矢は軌道を大きく変え、異様な速度でエアハルトへ飛び込む。
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