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八重咲の勇者たち ~最弱スキルで最強になれ~  作者: 賢河侑伊
第二部 3章 神殺し 編(side)
79/83

5-9

 誰かに、強く抱きしめられているような、押しつぶされているような―


 ガクは、髪の毛のなか、剣を()るう。


 ―あきらめてたまるか


 涙が、零れ、鼻水でむせる。


 ―死にたくない、死にたくない、こんなところで


 剣が、絡めとられ、ぐっと引っ張られ、重くなる。


「誰か……誰か!」


 口元まで、髪が押し寄せ、息すらできなくなる。頭皮の、わずかに脂っぽい匂いで、息がつまり、息が出来なくなる。



 ―力が欲しいか? 生き残りたいか?



 また、地の底から響くような低い声。そして、ガクには、声の主が、ガクに宿そうとしている凄まじい力が手に取るように分かる。


 大火を生み出し、全てを焼き尽くし、世界を灰にする。


 ―こんな力を手に入れたら……


 意識が鈍くなる。


 しゅん、という、風切り音。急激に、口回りが軽くなり、あえぐように呼吸する。


 咳き込みながら、前を見ると、ひとりの騎士が立っていた。すらりと背の高い、女性騎士。歳は、20代後半だろうか。


 陶器のように白く透明な肌。絹のような黒髪。切れ目で、細く、開いているか分からない目。


「助けて!」


 ガクは、必死に手を伸ばす。


 女騎士は、恐怖に顔を歪めることもなく、


「オリヴィア・オイレンブルク。参る」


 オリヴィアは、腰に手をやり、ロングソードを抜く。


「脳が痺れます。構えて」


 オリヴィアは、囁く―



 心髄共鳴



 《断首騎行(デュラハン・パレード)


 オリヴィアは、剣を構え、人形に躍りかかる。その瞬間、オリヴィアの身体から、数人の騎士が現れる。まるで、影分身のようだ。


 ―一体、どこから現れた?


 5人の騎士が、オリヴィアの身体から「現れ」、人形に襲い掛かる。その騎士には、首がない。


 ―首無し騎士(デュラハン)を召喚した!


 ガクは、ぽかんと口を開ける。


 オリヴィアと、5人の首無し騎士は、髪の毛を断ち、人形へと接近。6本の剣が、人形をバラバラに切り裂く。そして、その残骸を、空中で掲げる。


 髪の毛が、ほどけ、地面に落ちていく。


「大丈夫ですか?」


 髪の毛から、逃げようと、もがくガクを、オリヴィアが助け出す。


「ありがとうございます……」


「怖かったでしょう。もう大丈夫ですよ」


 オリヴィアは、ガクを抱きしめた。ほのかに甘い香りがし、ガクは意識を失った。

 読んで頂きありがとうございます!

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