3-5
「ガク君、このままだと、本当に死ぬっスよ」
ニッコラが八重歯を見せ、笑う。
「怖い、強い、打つ手がない、そう言ったイメージが私のドラゴンをさらに、怖くし、強くし、打つ手を無くさせるっス」
ガクは歯噛みする。
「ドラゴンに殺される、と言うイメージを、ガク君が受け入れてしまっているからっスね。それを弾き返さないと!」
ガクは、剣を出そうとする―いや、さっき受付に渡したし、
「余計な事は考えないっス! イメージするっス! 私は、この世界を本気でイメージしたっス。実在できる、とね」
ドラゴンが牙を剥き、迫る。
ガクは、逃げながら思う―誰か力を貸してくれないか。
数人の顔が浮かぶ。本気で、この状況を助けに来てくれる「誰か」
―そんな人は……ひとりだけ、いた
赤い「何か」が空から降ってくる。そして、それは、ドラゴンの上に着地。間髪入れず、ドラゴンの目に、細い刀が突きさす。
ドラゴンは体勢を崩し、倒れこむ。
ニッコラが、慌てたように、首を振り、周囲を見る。
倒れたドラゴンの片目に、さらに刀を叩き込む誰か。その赤い服は、まるでドラゴンが血の涙を流しているかのよう。
「実在の人物を呼び出すのは至難の業なんスけどね……」
ニッコラの笑みが消える。
ドラゴンの目に、刀を突きさしていた剣士が立ち上がる。
「チユキ……!」
ガクは、チユキが、渡してきた刀を受け取る。黒刀。
「正確には、あたしの一部が読み取られてるだけ。表情はこのくらいで勘弁してね」
千雪の顔は仮面で覆われており、手足も藁で出来ていた。
「チユキちゃんに対する圧倒的な信頼……この状況下で必ず助けに来てくれる、と言う信頼感、ドラゴンも屠れるという強さへの安心感」
ニッコラは、歯噛みし、
「やるじゃないっスか」
でもね、とニッコラは言い、
「助っ人なら、私だって、呼べるっす」
「そっちが血の雪なら、こっちは血の雨っス」
ニッコラは筆を振り上げ、空中に向かって投げる。空中に、それが突き刺さり、世界が真っ赤に染まる。
「ガク君は、こんなことを信じてないっスか?」
「なんです?」
「不死の異能を持っていたソフィア・アイメルトが死んでるわけない。北部同盟に潜り込み、反逆の機会をうかがっていると」
ガクの心臓が激しく鼓動する。
そして、ニッコラの背後から、血塗れの人物が現れる。




