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八重咲の勇者たち ~最弱スキルで最強になれ~  作者: 賢河侑伊
第二部 2章 心髄共鳴 編
72/83

3-5

「ガク君、このままだと、本当に死ぬっスよ」


 ニッコラが八重歯を見せ、笑う。


「怖い、強い、打つ手がない、そう言ったイメージが私のドラゴンをさらに、怖くし、強くし、打つ手を無くさせるっス」


 ガクは歯噛みする。


「ドラゴンに殺される、と言うイメージを、ガク君が受け入れてしまっているからっスね。それを弾き返さないと!」


 ガクは、剣を出そうとする―いや、さっき受付に渡したし、


「余計な事は考えないっス! イメージするっス! 私は、この世界を本気でイメージしたっス。実在できる、とね」


 ドラゴンが牙を剥き、迫る。


 ガクは、逃げながら思う―誰か力を貸してくれないか。


 数人の顔が浮かぶ。本気で、この状況を助けに来てくれる「誰か」


 ―そんな人は……ひとりだけ、いた


 赤い「何か」が空から降ってくる。そして、それは、ドラゴンの上に着地。間髪入れず、ドラゴンの目に、細い刀が突きさす。


 ドラゴンは体勢を崩し、倒れこむ。


 ニッコラが、慌てたように、首を振り、周囲を見る。


 倒れたドラゴンの片目に、さらに刀を叩き込む誰か。その赤い服は、まるでドラゴンが血の涙を流しているかのよう。


「実在の人物を呼び出すのは至難の業なんスけどね……」


 ニッコラの笑みが消える。


 ドラゴンの目に、刀を突きさしていた剣士が立ち上がる。


「チユキ……!」


 ガクは、チユキが、渡してきた刀を受け取る。黒刀。


「正確には、あたしの一部が読み取られてるだけ。表情はこのくらいで勘弁してね」


 千雪の顔は仮面で覆われており、手足も藁で出来ていた。


「チユキちゃんに対する圧倒的な信頼……この状況下で必ず助けに来てくれる、と言う信頼感、ドラゴンも屠れるという強さへの安心感」


 ニッコラは、歯噛みし、


「やるじゃないっスか」


 でもね、とニッコラは言い、


「助っ人なら、私だって、呼べるっす」


「そっちが血の雪なら、こっちは血の雨っス」


 ニッコラは筆を振り上げ、空中に向かって投げる。空中に、それが突き刺さり、世界が真っ赤に染まる。


「ガク君は、こんなことを信じてないっスか?」


「なんです?」


「不死の異能を持っていたソフィア・アイメルトが死んでるわけない。北部同盟に潜り込み、反逆の機会をうかがっていると」


 ガクの心臓が激しく鼓動する。


 そして、ニッコラの背後から、血塗れの人物が現れる。

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