64話
チユキは、身体をわずかに左にかたむけ、足を肩幅よりすこし広げる。
手は、刀の柄に。
―心を燃やせ/氷の理性で斬れ。
《迅刀》が曲刀を振る。
チユキは、かかとを浮かせ、瞬時に後方へ。その際に、足が公差しないように、右と左が同じ距離だけ動くようにステップを刻む。
回避の速さに、《迅刀》はわずかに目を細める。だが、すぐに、ふっと笑う。
チユキは、鞘を傾け、高速で抜刀。逆袈裟切りで《迅刀》の胴体を切り上げる。
《迅刀》は刀を振り上げ、盾に。磁力でチユキの刀は弾かれる。
チユキは、瞬時に体勢をもどす。
―やはり《迅刀》は磁力を刀にまとわせ、防御に使用している。厄介な相手だ。
だが、隙もある。《迅刀》は、攻撃時に磁力を解くようだ。そうしないと相手を吹き飛ばす可能性があるからだろうか。
タネは分かった―チユキは目を細める。
まぁ、この程度か―《迅刀》は内心、ほほえむ。抜刀術と言っても、磁力によって防がれれば、どんなに速くとも意味がない。
しゅっ、しゅっ、と《迅刀》の背後から、噴射音が聞こえる。もしも、今以上の速度で居合を使えば、チユキ本人がズタズタに切り裂かれるだけだ。
結晶化のタイミングを見切り、《迅刀》は、チユキへと接近。磁力を用いた、急加速。
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