13-16
チユキは、足を肩幅よりすこし開き、かかとを軽く浮かせる。
手は、刀の柄に。
―心を燃やせ/氷の理性で斬れ
《迅刀》が曲刀を振る。
チユキは、瞬時に後方へ。その際に、右足と左足が同じ距離だけ動くようにステップを刻む。
その速さに、《迅刀》はわずかに目を細める。
チユキは、背負っていた衣服を、右手で投げる。森を歩くときは、枝や草から肌を守ってくれるが、いまは、重しにしかならない。
―さぁ、磁力の盾を見せろ
《迅刀》は、衣服を切り上げる。衣服が凍っていたせいで、白い結晶が散る。刹那、《迅刀》の視界は、遮られる。
チユキは、衣服を放った軌道をそのまま利用し、右手を左半身へ。そして、刀の柄を握る。鞘を回転させ、高速で抜刀。逆袈裟切りで《迅刀》の胴体を切り上げる。
《迅刀》が、顔をゆがめ、
「手癖の悪いッ!」
刀は、見えない「何か」にぶつかり、弾かれる。チユキは、瞬時に体勢をもどす。
―やはり《迅刀》は磁力を刀にまとわせ、防御に使用している。視界を封じられ、別角度から斬られることも計算していたならば、いまの出力が最大なはずだ
《迅刀》が突きを繰り出す。チユキは、後退しながら、刀で弾く。フェイントだったのだろう、軽い。
―なうほど、《迅刀》は、攻撃時に磁力を解くようだ。そうしないと相手を吹き飛ばす可能性があるからだろうか
―タネは、わかった
チユキは、目を細める。
《迅刀》は、あくびをし、必死に涙を流そうとする。眼が、氷でチリチリと痛むのだ。
―これで、抜刀術がすごければ、今頃、俺は斬られていただろう
―だが、まぁ、この程度か。《迅刀》は内心、ほほえむ。抜刀術と言っても、磁力によって防がれれば、どんなに速くとも意味がない
しゅっ、と《迅刀》の背後から、噴射音が鳴る―ガクを切り刻んだ結晶化する溶液だ。もしも、今以上の速度で居合を使えば、チユキはズタズタに切り裂かれる。
結晶化のタイミングを見切り、《迅刀》は、チユキへと接近。磁力を用いた、急加速。
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