62話
数分後、男たちは、情報管理官に拘束された。
両名とも、北部同盟騎士団の事務職であり、《異能殺し》のスパイであった。《迅刀》の仲間であり、先日の襲撃を手引きした者たちだ。
彼らの計画では、チユキを森の廃教会へ誘導。そして、チユキに《異能殺し》のメンバーを殺させる。
チユキは、《異能殺し》への個人的復讐を宣言し、投獄され、脱獄した。チユキの行動は、法にもとづくものではなく、騎士団の任務でもない、と《異能殺し》は喧伝するはずだ。そんなことになれば、無能力者と異能者の分断は加速してしまう。
情報管理官は、
「我々が入手した情報では《迅刀》がいるのは廃教会ではなかった。その近くの村に《迅刀》が居るという話だったはずだ」
「まんまと騙されたってわけだ」
フェルグスは苦笑する。
チユキは、異能を乱用し、復讐を遂げる。そして、それを騎士団は止められない。これが、《異能殺し》のシナリオだったわけだ。
「だが、チユキの機転で防がれた」
チユキは、自分を罠にかけた者が、牢に来ると予想した。そこで、牢にガクの持っていた木の実のフェロモンを付着させた。そして、牢近くで待機していたのだ。
スパイは、チユキの罠に引っかかった。フェロモンが手に着いたことで、特定され、チユキから壮絶な拷問を受け、情報を吐かされることとなった。
「やれやれ……」
フェルグスは再びため息をつき、残っている騎士たちに廃教会に行くように指示。これで、警備を除くと、騎士は、負傷した者以外は全員が出払ってしまう。完全に戦力が分散していた。
情報管理官は、うなり、
「だが……廃教会はデコイだと分かったなら、チユキはどこへ消えたんだ?」
ガクは考える。
廃教会に居るのは、負傷した暗殺者だ。つまり《迅刀》は別の場所にいる。そして、わざわざ北部同盟の騎士を出払わせた。
どこかを襲撃しようとしている? まさか、ここに? いや、違う。ここの警備は、増強されたばかりだ。《迅刀》一人では、この前のようにはいかないだろう。
なら、目的はなんだ?
ガクは目をつむり、考える。《異能殺し》の目的は、異能者と無能力者の分断を煽り、加速させること。
「チユキと言う異能力者が、無能力者の暗殺者を殺す……」
ガクは、ぼんやりとつぶやく。
「異能力者による暴力、それをアピールしたい……」
だが、敵に異能力者は居ないはずだ―
「鉄妖……」
鉄妖を知る者は少ない。北部同盟では、一部の騎士が使用したに限られている。戦争の影響が少なかった村では、鉄妖は異能だと思っている人さえいる。
まさか、鉄妖で虐殺を―
ガクは息を飲み、
「ここから遠くて……かつ戦禍に巻き込まれなかった村はいくつありますか? それこそ、一時間以内で行ける場所だとすると」
情報管理官は、地図を出し、2つの村を指さす。
「このどちらかに、チユキはいます」
「どういうことだ?」
フェルグスが、詰め寄る。
「敵は、鉄妖を異能のように見せて、村を襲うつもりです」
ガクは杖を捨てる。
「僕が行きます。《迅刀》と戦っているチユキと合流するか、それとも《迅刀》と相対するか分かりませんが」
「分かった……」
フェルグスが拳を握りしめる。
「頼む……」
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