61話
騒ぎで、ガクは目を覚ました。
「チユキが脱走した!」
騎士の一人が部屋に飛び込んでくる。
ガクは起き上がろうとし、強烈なめまいを感じる。
「止められなかった……」
ガクは、身体を折り、涙を流した。
ふと、掌の木の実がないことに気づいた。
「これは……」
ガクは《植物操作》を使用する。種から発せられる強烈なフェロモンが、鼻をつく。
フェロモンは、騎士団の事務所から香っていた。杖をつきながら走り、騎士団の事務所へと向かう。
フェロモンが発せられている場所に着く。それは稽古場だった。ガクは眉をひそめる。
深夜の稽古場、なぜ、ここにフェロモンの反応がある?
ガクが、明かりをつけると、血塗れの男が2人、転がっていた。
「なっ……!」
ガクは咄嗟に駆け寄り、
「大丈夫ですか?」
男は、手足を縛られており、
「頼む……いうから、いうから殴らないでくれ、北部同盟に潜入したのは一年前、流した情報は―」
ガクは、ハッとし、男を見る。手足の一部には、酷い凍傷。顔には殴られた傷。
これをやったのは、チユキか? そして、あの種を盗んだのも、チユキだとしたら―
ガクの頭が高速で回転する。チユキがやったなら、何か考えがあるはずだ。
ガクは男の目を見すえ、
「改めて聞きます。あなたは、何者ですか?」
「俺は……《異能殺し》のスパイだ」
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