55話
エッカルトは、狭い部屋のなか、数人の男たちを見つめていた。
彼らは《異能殺し》に対し、報復を計画している北部同盟の騎士たちだ。
「現在、北部同盟騎士団では、《異能殺し》への個人的報復、それを想起させる言動さえも厳しく取り締まられている」
だが、と中央にいる男は短く言い、
「仲間を殺した敵を生かしておくわけにはいかない!」
数人の男が、拳を振り上げる。エッカルトは、呆然とし、それにしたがう。
エッカルトは、情報管理官の指示の元、この組織に潜入した。
当初は、フェルグスらへの失望を共有するだけの組織だったが、過激化し、実際に報復を行おうとし始めている。
―まずいな
エッカルトの脇を冷たい汗が伝う。
「《異能殺し》に対する捜査も進んでいない! 誰かが動かなければ!」
隣にいる男が声を荒げ、エッカルトはびくっとする。
「熱くなる気持ちは分かる。だが、今は抑えてくれ」
「いつまで待てばいい?」
「状況が進展しなければ、これから一週間後、《異能殺し》への襲撃を実行する」
「襲撃?」
ぽつりとつぶやいたエッカルトに、みなの視線が集まる。常軌を逸したような鋭い視線。憎悪そのもののような、どす黒い表情。
「《異能殺し》をかくまった可能性のある村を襲撃し、情報を吐かせる」
他の騎士が、
「確実に、かくまった証拠はあるのか?」
「ない。だが、今の状況では、しらみつぶしになる」
エッカルトは、背筋に冷たいものが這うのを感じる。
―もし、その村が《異能殺し》に関わっていなければ、報復の増幅と連鎖が始まってしまう
これから5日後、何もしなければ、憎悪の炎が弾けることになる。
―やべえ。また戦争が始まっちまう
エッカルトは、叫びたくなるのを堪え、声を必死に殺す。
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