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チユキは、牢のなか、《迅刀》のことを考えていた。自分の異能を使い、どう殺せるのか。
チユキの異能―《氷華ファフロスト》―それは霜害の仕組みを使った氷の生成能力。つまり《植物操作》の応用技なのだ。
チユキは、植物の操作範囲も小さい。それこそ《植物操作》では、ガクには、敵わない。だが、この《氷華》だけは、誰にも負けないほどに能力を磨いてきた。
《迅刀》との戦闘を何度も脳内でシミュレーションする。腹の底から、憎悪が沸き上がり、全身の血液を沸騰させる。奥歯が欠けないよう、小さな木の枝を噛み締め、シミュレーションをする。
だが、何度やっても、勝てなかった。だが、勝てるようになるまで、シミュレーションを行うつもりだった。
ふと、手が、かじかんでいることに気付く。夢中で、シミュレーションをやっていたので、無意識に《氷華》を発動していたようだった。
冷え切り、赤くなった手。チユキは、それをさする。
『だいじょうぶだよ。きっとできるようになるから』
ふと、かつて研究所で、ソーニャに言われた言葉が思い出される。
数年前―
チユキは、《氷華》をコントロールできず、泣きながら訓練していた。ひたすらに孤独で、周囲に見えない氷が張っているかのような感覚があった。
お前だけができない、お前だけが、お前だけ、できない、できない、できそこない―
研究者に言われた言葉が、ぐるぐると頭を回る。忘れようと、頭を掻けば描くほど、声が大きくなっていく。
疲労で目はかすみ、喉が渇き、意識は朦朧としていた。脇から冷たい汗が流れ、それがいっそう、自分を焦らせる。自分に対する絶望が、肥大化していく。
―もしかしたら、永遠にできないかもしれない
手は凍り付き、涙さえも頬の上で固形化する。それがチユキをみじめにさせた。
―もう、無理だ
かじかみ震える手に、小さな手がそえられる。白く、細い手。だが、暖かい手。
チユキが顔を上げると、憧れの人がいた。
『あせるのは分かる。でも、こんなやりかたは、ひこうりつ』
ソーニャは、チユキと視線を合わせずに言う。
チユキは、唖然とし、されるがままになる。ソーニャの手の温もりが、チユキに伝わっていく。
『わたしは、しってる。ずっと、どりょくしてること―』
だから、とソーニャは、チユキの手を強く握り締め、
『―だいじょうぶだよ。きっとできるようになるから』
チユキは、我に返る。その手は、わずかに温もりを取り戻していた。
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