53話
チユキは、牢のなか、《迅刀》のことを考えていた。自分の異能を使い、どう殺せるのか。
チユキの異能―《氷華》―それは霜害の仕組みを使った氷の生成能力。つまり《植物操作》の応用技なのだ。
チユキは、植物の操作範囲も小さい。それこそ《植物操作》では、ガクには逆立ちしても敵わない。だが、この《氷華》だけは、誰にも負けないほどに能力を磨いてきた。
《迅刀》との戦闘を何度も脳内でシミュレーションする。ガクの思考や記憶の一部が《植物操作》を通じ、チユキにも流れ込んできた。
黒衣の剣士が、ガクをズタズタにする瞬間の記憶を何度も繰り返す。
腹の底から、憎悪が沸き上がり、全身の血液を沸騰させる。奥歯が欠けないよう、小さな木の枝を噛み締め、シミュレーションをする。
チユキは、《氷刃散華》を発動。前方に氷の粒を発生、飛翔させる。そして、集結させる。
《迅刀》は、チユキの体勢から斬撃の位置を予想。磁力が《迅刀》の周囲を包み込む。
チユキは、《迅刀》がデコイに反応した隙をつき、抜刀。《迅刀》がわずかに磁力を切った瞬間に、斬撃を繰り出す。高速で高威力、それこそ、一撃で全身の筋肉が過熱し、使い物にならなくなるような。
《迅刀》はとっさに反応。チユキの刃は弾かれる。刀を持ったまま、大きく体勢を崩してしまう。
《迅刀》が磁力を解き、斬撃に入ろうとする。
―やはり、攻守に隙が無い。だがな
チユキは、瞬時に氷を生成。全身を薄く包み込む。筋肉を冷却させ、疲労を回復。強引に刀を振るう―
ハッ、と息を飲み、チユキは我に返る。何度やっても、斬られるのは自分だった。
チユキにできる《迅刀》対策は、《氷刃散華》による目くらましと、氷による筋肉の冷却を使った二連撃。それしかない。
例えば《氷刃散華》と身体の冷却を同時に行えるくらいの氷の精製能力があれば、《迅刀》を殺せるかもしれない。だが、今のチユキにそれは無理だ。同時に使用しようとしても、氷の量が足りないのだ。
チユキは、木の枝を吐き出し、唇を噛む。
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