5話
「スキルを……再現?」
「ああ、お前のスキルで俺の身体を解析しろ。その後、俺のスキルを再現できるように、植物を構築するんだ」
「そんな……無茶だ」
「できる。お前なら、必ずできる。一日ある。お前の解析技術と、薬学知識があれば、俺のスキルを再現できる」
ガクは歯噛みし、
「ですが……あなたのスキルは?」
「俺のスキルは《加速》だ。人を越える感覚で世界を見ることができ、動くことができる。お前なら、使いこなせる」
フェルグスが言っているのは、こうだ。
植物で人体の出力を再現できるのであれば、スキルの再現も可能である、と。で、それにガクの持つ《植物操作》による、知覚共有と操作を組み合わせ、植物で再現したスキルをガクが使用するのだ。
「やるしかない。良いな」
ガクは、自分が感覚共有している蔦植物を、フェルグスの上に重ね、スキルを発動。その身体構造を細かく解析していく。
植物は、ヒトよりも高い感知能力を持っている。それを利用し、フェルグスの身体構造を解析するのだ。同時に、その血液を採取し、植物を通じて、それが持つ分泌物質を解析する。
スキルとは、その者が持つ体質から生まれる。つまり、肉体そのものや、血液や汗を解析することで、その発動原理を分析できる。しかし、それには高度な医学知識と、何よりも体液を分析できるセンサーのようなものが必要になる。それがガクのスキルなのだ。
ガクは、額を伝う汗を拭き、解析を進める。植物との知覚共有は、言語と言うより、感覚に近い。痛いという言葉が聞こえる、と言うよりは、鈍痛が伝わってくるというような。
フェルグスの身体の解析と、その身体で起きていることを植物で再現する、と言う二重の作業に、ガクは倒れそうになる。
「む……無理だ」
気が付けば弱音を吐いていた。
「できるさ……お前なら、焦るな」
フェルグスが青い顔で言う。その額の汗を拭う。今が峠だった。
「必ず救ってみせます」
ガクは言い、再現を続ける。だが、上手く行かない。何か、大きな勘違いをしているという予感。
何を見落としている―
ガクは深呼吸をする。
再現する、再現する、再現!
はっ、と息を飲む。
フェルグスの肉体を再現するのではなく、スキルを植物で再現するためには、どうするか考えろ。置換を行うんだ。
《加速》する時は、世界がゆっくりと見える、とフェルグスは説明した。それを植物に引き起こす事象をリストアップする。捕食者によるストレス、日光を感じ取った時の渇望、高速な情報伝達―
それらを疑似的に引き起こす薬を作り、植物に使用する。そして、知覚を共有―
キィーン―と、ふと耳が遠くなる。
世界が静かになる。フェルグスを見ようとすると、水中にいるかのように自分の動きが遅い。そして、目の前のフェルグスは、死んだように動かない。しかし、非常にゆっくりと、呼吸のたびに口が開き、胸が上下するのが見える。
ぱん、と何かが弾けたような音がする。気が付くと、自分の荒い息が聞こえた。
「《加速》……したようだな」
目を白黒させているガクを見て、フェルグスは微笑んだ。
ガクは、さらなる配合を進めた。
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